リーマン後に起きた「まさかの値上がり劇」
そんな折、中古の販売在庫は大幅に減り始めている。見ず知らずの人が内覧するのを敬遠する気持ちから販売をやめる物件が増えたためだ。こうして在庫が減少しながら、在庫価格は上がった。
こうしたことは以前にも何度も起きている。リーマンショック後、新興系のデベロッパーの多くが資金ショートして倒産した。この結果、新築マンション供給が前年の1/3に急減し、あまりの新築物件の少なさに中古マンションが売れて、在庫が減りながら値上がりを始める事態が起こる。リーマンショックから1年しか経っていないのに起こった「まさかの値上がり劇」だった。こうして、百年に一回の経済危機の様に言われたリーマンショックから2年後には元の価格に戻っていた。
不動産価格はローンで決まると書いたが、需給バランスはこうした在庫減の時に価格が上がる方向に動きやすい。しかし、在庫が増えても売り手に焦りがなければ、価格は下がる方向には動きにくい。それが不動産価格の特徴である。
新築分譲戸建の購入価格が高くなっている
新築分譲戸建市場は活況を呈している。コロナ前に首都圏で3.4万戸ほどあった在庫が毎月1000戸ほど減り続けて、今や2.2万戸の低水準になっている(スタイルアクト調べ)。これだけ売れているものの、新築の着工戸数は4月以降前年同期比で大幅マイナスを続けている。その結果、在庫が少なくなる一方で、販売期間が短くなり、竣工前に売れる事態が増えている。新築分譲戸建は一般的に売れ行きが悪く、建物が竣工してしまうと売出価格の値引きが始まるが、売出と成約の価格差は在庫減少につれて大幅に縮まっている。実質的に購入価格は高くなっているのである。
ここで言えることは、住宅市場の場合、マンションでも戸建でも一定の需要が常にある中で、コロナが一層の需要喚起をし、緊急経済対策による供給不足まで招いたので、価格は上がる方向に動いたということだ。都市の住宅市場において、需給バランスの影響は上がる方向にしか動かない、これが実態である。このため、不動産価格は当面下がることはなく、上がることしかないのである。
下がる時は不動産事業者が倒産して資産処分する場合に限られる。それは金融が引き締められた時で、当分の間無さそうに思われる。金融緩和されているうちは持ち家を早く買った者勝ちなのだと言うことは分かっておいたほうがいい。