女性の社会進出より「男性の家庭進出」のほうが先

また、夫婦でリモートワークをしている妻の側からは「家にいるくせに、夫は全然変わらない。期待したこっちがバカだった」という、怒りと諦めで満ち満ちた悲痛な声がたくさん聞こえてきます。全然、ニューノーマルじゃない! 男性のライフスタイルは、“ノーマル”なまま……。

政府、メディア、そして社会の空気は、「女性の社会進出」をゴリゴリ推してきます。それ自体は、素晴らしい。でも、この状況では、どう考えても家庭を維持しながら社会で活躍することは無理ではないでしょうか。だって、社会に進出して、キャリアを積んでいくには相応の時間が必要です。しかし、日本の女性には、そんな時間はどこを見渡してもありません。

「家事も育児もこれまで通りやってね! 手を抜いちゃダメだよ! でも、仕事も、も〜っと頑張ってね★」

今社会は、女性に対してこんなメッセージを無自覚に発信しています。これは、どう考えてもおかしいです。女性に社会進出してほしいなら、「男性の家庭進出」が先です。男性が家事育児を女性と平等に担ってはじめて、「女性の社会進出」が実現する土台が整います。でも、男たちの行動に変化の兆しはほとんどありません。いったい、どうすればいいのでしょうか。

働きすぎで家事ができない

そもそも、なぜ日本人男性は他国の男性と比べてこんなにも家事育児をしないのか? われわれ日本男児って、そんなに怠け者なの……?

イラストレーション=ハナウタ

実は、そうではないのです(いや、もちろん、単に怠けてるだけのケースも往々にしてあると思いますが!)。

日本人男性は、働きすぎているために、家事育児をする時間がないのです。日本人男性の有償労働時間は、先進国の中でぶっちぎりトップの452分となっており、スウェーデン人男性との差は139分! つまり2時間19分! まさに、先ほどみた日本人男性とスウェーデン人男性との家事育児の差そのものです。

家事育児等を含む無償労働(お金が支払われない労働のこと。典型的なのは家事労働)も含めた総労働時間では、スウェーデン、カナダも日本並みに長いのですが、日本は有償労働の男女差が180分と大きく開いているのが特徴です。これは、いまだ日本人女性の就業者に占める非正規雇用者の割合が56%と多いことが影響しています(図表2)。

実は、男性も変わりつつある。目を凝らせば……

しかし、このような状況の中でも、日本の男性たちは健気に変わろうとしています.

実際、2008年の頃と比較すると、就労時間にまったく変化がないにもかかわらず、家事育児をする時間が増えています。微妙にだけど……‼(図表3)

このデータが、今の日本の実情をよく表している気がします。日本の男たちは、断じて救いようのないダメダメな存在ではないのです。むしろ、今の現実の中で、少しでも家事育児にコミットしようという前のめりな姿勢を見いだすことができます。目を凝らせば!

もちろん、「“職場の空気”とか言ってないで、定時で帰ってきたらいいでしょ!」というご意見もあろうかと思います。それは、間違いありません。しかし、私もかつて残業が当たり前の企業に勤めていた経験があるのでわかりますが、そういう職場の空気を無視して、ひとりせっせと定時で帰宅するというのは、本当に恐ろしいでことです。出世コースから外れてしまうかもしれない、周囲の期待を裏切ってしまうかもしれない、すると、家族を守るためのお給料がもらえなくなってしまうかもしれない……、そんな不安が頭をもたげます。

そして、この男たちの不安が、女性を家に縛り付けています。