目下、日本国内では「五輪中止を」という声が日増しに大きくなっているが、以上に述べたように、開催都市が中止是非の判断を行うことは不可能だ。言うなれば、幕末に外国列強に開国を求められた時に日本が結んだ不平等条約のようにも読める。
理論上「無限に賠償請求される」が…
次に、東京五輪が仮に中止となった場合の損害賠償についてみてみよう。武藤事務総長は「分からない」と濁したが、「項目66」をさらに読み進めると、このような記述がある。
米国企業弁護士で企業間の契約などの交渉に詳しい照井公基氏は、この(ii)について、「IOCは、自身が東京都とJOC(日本オリンピック委員会)に対して保有している特定及びすべての損害賠償金請求権、またその他のあらゆる法的権利及び救済権利を放棄するものではない」と、一般的な見方を示す。
「IOCは『損害賠償の請求権を放棄しない』と読めるので、東京都またはJOCが五輪を中止した場合、IOCが日本側に対し無限的に賠償を求める可能性も理論的にはありえる」としながらも、英語で書かれている内容のトーンが「妙にのんきなのが気になる」という。
照井氏は「本当に無限責任を負わせたいならば、IOCはもっと強権的な文面を盛り込んできたはず」と指摘。「開催都市契約」について、仮に「IOCが中止を決定したとしても、東京都に対する損害賠償の請求権利は留保しているものの、法外な罰則や損害賠償を要求する可能性は低いのではないか」との見方を示している。
東京都が補償を求めることは可能?
では逆に、東京都がIOCに対して補償を求めることはできるのか。中止した際の免責に関する内容は以下の通り記されている。
・当該中止または解除に関するいかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする。(以下略)