「協力しないと怒る妻VS協力してもダメ出しされる夫」という構図

実際、リクルートの調査結果では、「家事への不満をぶつけられ、あまり感謝されない」「自分の家事にダメ出しをされる」「自分の思い通りにならないとイライラしている」など、夫なりに努力はしているものの、妻に認めてもらえないことを嘆く声があがったという。

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夫の多くは「頑張っているつもり」だし、「自分なりにやっている」。にもかかわらずその頑張りが、どうやら妻には伝わっていないらしい。それを日常の生活の中で感じているのだ。喜んでほしい、楽にしてあげたいと思っているのに、それが裏目に出ている夫がこんなにいるとは。

その結果が、「協力してくれないと怒る妻」VS「協力しているのにダメ出しをされる夫」という構図を生み出す。

家事の協力を巡る意識のずれや感じ方の食い違いは、近年では教育学や社会学などの研究対象にもなっている。いくつもの調査を実施している東北大学大学院教育学研究科の神谷哲司准教授は、妻の夫批判は、「育児への関与への要求とやり方や考え方の違いから生じる」という。

夫の手伝いの方法や考え方が、妻のやり方や考え方とずれると、妻にダメ出しされるのだ。また、手伝いが妻の求めているレベルに達しないと、喜ばれるどころか、批判の対象になってしまう現状が、調査からわかる。

では、ダメ出しされず、家事のもめ事を少しでも減らすにはどうすればいいのだろう。夫側の「協力したい」「家族に喜んでもらいたい」という思いは、どうしたら、妻にしっかり伝わるのだろう。

ダメだしされない家事=妻と同じレベルの家事

基本は、ダメ出しをされないように手伝うことだ。手伝いの中身をダメ出しされないレベルにもっていければ、合格点。大喜びしてもらえないまでも、感謝してはもらえるはずだ。

妻からダメ出しをされない手伝いというのは、言い換えれば、日頃妻がやっているレベルで家事をすることを意味する。それができれば、ダメ出しももめ事も格段に減る。いや、日頃の彼女の家事のレベルの上を目指すことが、感謝してもらうには必要かもしれない。

こと、掃除に関しては、「どうせやってもらうなら、しっかりやってもらいたい(つまり、普段自分がやっているよりも上のレベルを求めたい)」という傾向が、人の心理にはないだろうか。

例えば、ロボット掃除機を導入すると、「思ったよりはキレイになるけれど、隅っこの仕上がり具合がいまいちよね」という話が出てきたり、「日頃の汚れを落とす掃除講座」をすると、たまりにたまった汚れで地の色が見えなくなったやかんが登場したり。

どうせやってもらうなら、私がやっているレベル以上のことを期待したい、という思いが見え隠れする行動パターンに遭遇することは、長らく掃除の講座などで人々とやりとりしてくると、珍しくない。

しかし、妻の家事をする時間が夫より長い家庭の場合、妻の方が家事の熟練度が高いので、日頃の妻レベル、あるいはそれ以上のレベルのお手伝いを実現するのは、残念ながら、そう簡単ではない。