多くの夫が「家事に協力して妻に喜ばれたい」と思っているが…

同年5月~6月のわずか2カ月間の朝日新聞の見出しだけを見ても、いつになく家事関連の記事が多い。女性の負担、在宅で家事との両立に悩む共働き夫婦など、家事にまつわる様々な事象がとりあげられた。

4月16日 「家族の口調きつく」「家事を分担」暮らし変えたコロナ
5月13日 コロナ禍、女性に負担増「家事が増えた」
5月20日 新型コロナウイルスについて主婦にアンケート
5月23日 (社説)家事の負担 自分流で見直す機会に
6月1日 家事代行サービスからの寄付活動を開始
6月2日 家事に偏り? 女性の七割は在宅でストレス増加、男性は……
6月6日 コロナ禍で働く主婦が夫に求める家事・育児に変化
6月7日 働くってなんですか コロナショック:五「見えない仕事」、在宅であらわに
6月11日 在宅勤務、ママに負担集中? 仕事「私が減らすしか」
6月17日 コロナ腰痛に悩む主婦、急増中 家事疲れで腰痛専門の治療院に
6月18日 新型コロナ 父親の葛藤:下 仕事と子育て、両立の苦労実感
6月20日 悩みのるつぼ 家事や子育てをしない息子の妻
6月26日 「withコロナ」で、調理の負担が増えた人82.4%

特に、外出のできなかった期間は、夫も否応なく家事に巻き込まれた。

緊急事態宣言が出た当初、スーパーにはスマホを片手に、買い物カゴを持った男性陣の姿が見られた。妻と相談しながら、商品を選んでいるのだろう。普段、買い物にこない人には、いくつもある商品の中から我が家の定番を探し出すのも容易ではないのが、およそショッピングには似つかわしくない真剣な顔つきから伝わってきた。

片手で商品をひっくり返して「賞味期限? どれ?」と言いながらスマホに対応する人。「そのブランドは見当たらないなぁ」と言いながら、困ったように乳製品売り場を行きつもどりつする人。できることを手伝おうということなのだろう、どこのスーパーに行っても、店内には買い物にいそしむ夫達の姿が見られた。

2015年に花王が実施した、夫婦の家事参加に関する調査では、6割以上の男性が「家事をすることで家族に喜んでもらいたい」と答えている。そうした思いがあるからこその、スーパーでの買い物だったのだ(図表2)。

【図表2】家事についての夫の意識
出所=『なぜ妻は「手伝う」と怒るのか:妻と夫の溝を埋める54のヒント』
【図表2】家事についての夫の意識

ちなみに、「家事をすることで家族に喜んでもらいたい」と考えている男性は、20代、30代、40代ともに6割を超え、多数派だ。特に、20代・30代は、70%超と群を抜いている。

20代の場合、子どもはいても未就学児など低年齢のケースが多いので、「家族」すなわち「妻」をさすと考えてよいだろう。妻に楽をさせたい、妻に喜んでもらいたいから家事をする、という夫が実に7割を超える。

家事に協力しても妻から文句を言われる夫

一方で、そんな夫達のやさしい心の内が、うまく受け止められていない現実も、最近の調査から見えてくる。

2019年にリクルートが全国の25~49歳の夫婦計1039組を対象に実施した「週5日勤務の共働き夫婦 家事育児 実態調査 2019」からは、妻に喜んでもらいたくて家事を手伝っても、なかなか芳しい結果を得られず困っている夫達の姿が浮かび上がる。

調査の中で、「家事・育児において困っていること」について尋ねたところ、「夫と妻では見事に意見がすれ違っている事実」が見えてきたという。

女性側の家事・育児の三大困りごとは、

①子どもに対しての時間がとれない(45.3%)
②家事に対しての時間がとれない(38.9%)
③子どもが急に熱を出した時などに仕事を休みにくい(23.2%)

と、家事と育児と仕事でとにかく時間がなくて困っている様子が伝わってくる。と同時に、彼女達の問題は、時間の管理や、家事・育児と仕事をどうやりくりするかと、非常に自己完結的だ。

一方の夫は何に困っているだろうか。

①子どもに対しての時間がとれない(38.1%)
②家事・育児に協力しているつもりが、妻から文句を言われることが多い(35.8%)
③仕事が忙しくて、なかなか家事・育児ができない(31.0%)

最も多かったのは妻同様「子どもに対しての時間がとれない」だったのだが、それとほぼ拮抗する形で多かった答えが、「協力しているつもりが、妻から文句を言われて困っている」だった。

妻がどうやったら時間を捻出できるかと、スケジュール管理で頭を悩ませている脇で、夫は妻との人間関係に悩んでいるのだ。