ある調査では男性の6割以上が「家事をすることで家族に喜んでもらいたい」と答えた。ここには大きな落とし穴がある。家事研究家の佐光紀子さんは「『妻に喜んでもらいたい』という動機だと『家事を手伝う』という考え方になる。しかし妻が喜ぶ水準は夫が考えているよりも高い。だから妻を怒らせてしまう」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、佐光紀子『なぜ妻は「手伝う」と怒るのか:妻と夫の溝を埋める54のヒント』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

家事を手伝わない夫
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手伝っても妻に文句を言われる夫達

夫の家事参加、家事シェアについての議論がかまびすしくなって久しい。

1988年から10年ごとに博報堂生活総合研究所がサラリーマン世帯の夫婦を対象に実施してきたアンケート調査「家族調査」によると、「夫も家事を分担する方がよいと思う」と考える夫は、1988年にはわずか38%だったが、2018年には81.7%と過去最高を記録した。

同じ時期、「夫も家事を分担する方がよい」と考える妻も、60.4%から85.1%に増えているとはいえ、夫達に起きた急速な意識改革にはとても及ばない。家事に対する意識は、夫達の中で急速に変わってきている(図表1)。

【図表1】夫婦の家事参加意識
出所=『なぜ妻は「手伝う」と怒るのか:妻と夫の溝を埋める54のヒント』
【図表1】夫婦の家事参加意識

この傾向に拍車をかけたのが、2020年の新型コロナウイルス禍で出された緊急事態宣言だった。東京都が2020年6月に実施した「テレワーク導入実態調査」によると、都内の従業員30人以上の企業におけるテレワーク導入率は、前年の25.1%から57.8%へと大きく伸びた。

9月以降、通常出社が増えているとはいえ、IT・インターネット業界では、フルリモートワーカーが5割を超えるといったデータも出ている。

学校もオンライン授業、行事の中止、部活の時間短縮などが浸透し、従来に比べると、家で家族と過ごす時間が長くなった。在宅時間が飛躍的に増えたことで、家事への注目度はかなりあがった。