1兆円を埋没費用とするか、未来に向けた機会費用とするか
こういった背景を踏まえながら、未来の東京、日本に禍根を残さない政治判断をしなくてはなりません。小池都知事は、一日も早くこの説明責任を果たし、都民、国民の皆様の納得と共感を頂くためのリスクコミュニケーションを図るべきです。
私は森前会長の問題発言について、プレジデントオンラインで「『森会長は即刻辞めるべき』という人たちは森会長の役割を誤解している」という記事を発表しました。私があの記事を通じて、最も伝えたかったことは、森前会長の影に隠れて責任を果たさない方々がオリンピックのオペレーションをやっても、この先、いっそう大変になるだろうという懸念でした。
このタイミングで、1兆円を超える「損切りの可能性」と、開催の如何を問わず東京のさらなる未来展望を描かなければいけない。小池都知事の責任は非常に重いと言わざるを得ません。この事実について、議会だけでなく、いまこそ都庁記者クラブをはじめとするジャーナリストの皆さんも、正面から小池都知事に考えを問い質してもらいたいと強く考えています。
私は、東京・日本の未来に向けた座標軸を意識して、必要事項すべてをテーブルに乗せ、真摯な議論を行い、多くの方が納得される判断ができるよう汗をかいていきます。
世論におもねる「マーケティング政治」は通用しない
右手に人命、左手に1兆数千億円。頭にご自身の立場。小池都知事におかれては、まずはご自身のパフォーマンスは忘れ、都民、国民と全力で向き合って頂きたいと思うのは私だけではないはずです。
コロナ禍で開催都市の環境は大きく変わりました。開催可否の権限はIOCにあるのは大原則ですが、都民・国民の皆様に説明責任を果たすのは開催都市の長としての責務です。小池知事の愛読書とされる『失敗の本質』にヒントがあるのではないでしょうか。
コロナ流行当初はフリップやフレーズなどで「やっている感」を出し、何となく逃げ切ってきましたが、もうみんな学んでいます。これから必要な事は十分なリスクコミュニケーションです。五輪開催を巡って世論が二分されたままでは、日本は壊滅へと突き進むことになります。
未来に希望と光を呼び込む政治が必要です。政治とは決める事です。為政者とは決める人です。これまでのような世論の風に反応するマーケティング政治は通用しません。まずは小池都知事の考えを明確にすべきです。その上で、何が実現可能で不可能なのかの検証、議論に移るべきだと考えます。