既に1兆円以上はオリンピックに“投資“している

確かに開催都市契約に「違約金」という言葉は明記されていません。

大会中止となった場合の財政負担については、開催都市契約(66条後段)にこう書かれています。

「理由の如何を問わずIOCによる本大会の中止またはIOCによる本契約の解除が生じた場合、開催都市、NOC(筆者注:JOC日本オリンピック委員会)およびOCOG(同:大会組織委員会)は、ここにいかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかなる種類の救済に対する請求および権利を放棄し、また、ここに、当該中止または解除に関するいかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする。OCOGが契約を締結している全ての相手方に本条の内容を通知するのはOCOGの責任である」

その上で、立候補ファイルには「万が一、組織委員会が資金不足に陥った場合は(中略)東京都が補填することを保証する」「東京都が補填しきれなかった場合には、最終的に、日本国政府が国内の関係法令に従い、補填する」となっています。

これらを踏まえると、五輪が中止になった場合、日本側が責任を負う可能性はゼロではありません。

具体的にはどのような負担が予想されるか。大会全体の予算案には約1兆6000億円の「支出」が記されています。このうち、既に支出済みの金額がどれくらいあるかが重要です。

例えば競技場などのハード整備は既に完成しています。具体的には、新国立競技場や有明アリーナなど新規恒久施設費用3460億円、既に整備を進めている仮設などが約4000億円、エネルギー・テクノロジー分野の会場整備が約2000億円です。

また、ソフト面でもセキュリティーなど、総額で6100億円の予算があります。仮に半額の約2000~3000億円使っているとすれば、ハード整備と合わせて事実上1兆円以上は、既に支出のあてが決まっていると考えられます。

都庁
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違約金はなくても多大な損失が発生する

一方で、五輪が開催された場合には「収入」があります。

放映権を原資とするIOC負担金が850億円、海外客などを含むチケット収入が900億円。さらにスポンサー料が、IOCとの直接契約560億円、日本側と契約した3500億円があります。中止の場合、この約5800億円が大幅減となる恐れがあります。