「ようやく事態打開の可能性が見えてきた」と産経社説
これまで長い間、原発を前向きに扱ってきた産経新聞の社説(主張)は「処理水の海洋放出 『風評』に負けてはならぬ」との見出しを掲げ、「ようやく事態打開の可能性が見えてきた」と書き出す。
掲載日も他紙よりも早く、政府が海洋開発を決める2日前の4月11日付である。
産経社説は指摘する。
「7日の菅義偉首相と全国漁業協同組合連合会の岸宏会長との会談を受けて政府は13日にも関係閣僚会議を開き、トリチウム(三重水素)を含む処理水の海への放出を決断する見通しだ」
この産経社説の見通しは的中した。産経社説はさらに指摘する。
「だが、第1原発の場合は事故に伴う放射能汚染水を浄化処理したトリチウム水なので、危険性はなくても風評被害を招くとして漁業者の間に反対の声が強い」
「そのため、東電は第1原発の敷地内に千基を超えるタンクを建造してトリチウムを含む処理水をためてきたが、来年秋には限界に達する見通しだ。それに加えて廃炉作業の前進には専用地を確保しなければならず、そのためにはタンクの撤去が必要だ」
政府や東電の側に立つわけではないが、海洋放出は避けられないのである。
産経社説は「風評被害は漁業者と政府の共通の敵である」とも指摘し、「根拠のない噂に負けてはならない」と訴える。確かにデマが風評被害を生む。放射性物質に対する正しい知識がいかに重要であるかがよく分かる。
「懸念を抱く国民は多く、納得と信頼欠けたままだ」と朝日社説
朝日新聞の社説(4月14日付)は「処理水の放出 納得と信頼欠けたまま」(見出し)と手厳しく、冒頭部分からこう主張する。
「懸念を抱く国民は多く、強い反対があるなかでの決定だ。政府や東電は社会の理解を得ぬまま放出することなく、対話を尽くす責務がある」
しかし、本当に懸念する国民は多いのか。前述してきたように反発の声はあるが、地元福島の一部の関係者を除けば、表立っているのは中国と韓国、それに野党ぐらいではないのか。