音楽面にかかわらず、ストーンズのすべての活動の司令塔になっているのがリーダーでボーカルのミック・ジャガーだ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済学を修めていた彼は08年、エリザベス女王からナイトに叙せられ、サー・マイケル・フィリップ・ジャガー(本名)となった。ミックは作詞、作曲、歌唱といった音楽面から、CDの販売促進、コンサートや出演映画のプロモーション、レコード会社や音楽出版社などとの契約にいたるまで、すべてを把握し、決裁している。ロックミュージシャンでありながら有能なビジネスマンでもあるのだ。前述の伝記にはこんな話もある。

「マイク(ミックのこと)は通学の時間も大学での時間も、女遊びにかまけることはなかった。事実5年後にはお腹の出た中間管理職、10年後には取締役、40歳になる頃には会長の座を夢見ているかのように、勉学に励んでいたのだ。このときの勉強は後々も役立つことになる。レコード会社の重役ウォルター・ヤコニコフが、世界的に有名なローリング・ストーンズのミックと打ち合わせしたときのことを、後にこう振り返っている。『ロックのやんちゃなプリンスという彼のイメージの下には、真面目に経済を勉強した人物の一面があった。数字に関してミックは実に几帳面だった』。打ち合わせを兼ねたランチの席上で、ミックとヤコニコフは印税とレコード売り上げについて、ナプキンの上に計算していた。『二分後ミックは正確な数字を出した』とヤコニコフ。『私がまだもたもたしていたのにね』」

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 デビューしてから十数年間、ストーンズはつねに「不良のバンド」「スキャンダルとゴシップのグループ」とされてきた。確かに、ある時期までキース、ミックは麻薬所持、逮捕、裁判といったスキャンダラスな出来事で世間に話題をふりまいた。そうした不良イメージが浸透していたため、入国許可が下りず、73年に行われるはずだった日本公演は中止となっている。

しかし、彼らは長い間、着実に活動を続けたことによって、スキャンダルやゴシップによる不良イメージをすべて払拭した。現在ではロックミュージシャンのなかでも歴史と風格を感じさせる大人のバンドとなっている。

ストーンズは今後もライブを続ける。いくつになってもファンの前に立ち、ロックを演奏することがローリング・ストーンズの魂なのだと思う。

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参考資料:『ミック・ジャガーの成功哲学』アラン・クレイソン著/大田黒奉之訳/越谷政義監修/Pヴァイン・ブックス刊/2500円(税込)、『「ザ・ローリング・ストーンズ LIVE ALBUM 1990-2006 PHOTOGRAPHS BY MIKIO ARIGA』/ミュージック・マガジン刊/4830円(税込)。映画「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」はTOHOシネマズ六本木ヒルズほか上映中。