自動車業界を代表する人物が座る副会長ポストは消滅

内定した人事に伴い副会長を務めているトヨタの早川茂副会長は6月の定時総会で退任し、会長への助言機関である審議員会の副議長に転じる。

中西会長自らが語っているように、通常なら各業界を代表する企業のトップが副会長のポストに就く。ところが早川氏が退任した後に、トヨタ、言い換えれば自動車業界を代表する人物が座る副会長ポストは消えてしまう。

自動車業界はコロナ禍に見舞われている今の日本経済にあって、名実ともに「ジャパン・ブランド」を代表する産業として牽引役を果たしている。日本経済を支える自動車業界の代表が経団連の意思決定から抜ける事態はまさに前代未聞といわざるを得ない。

早川氏が新たに就く審議員会の副議長のポストはこれまで、将来の副会長に向けた登竜門とされてきた。通常なら副会長からそんな格下に転じることはない。それでもあえてこのポストで「残留」させた早川氏のこの処遇は、経団連にとってトヨタという企業の存在の重みと自動車業界への配慮から取り繕った人事にも映る。

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「トヨタが経団連に距離を置き始めたのでは」

トヨタはかたくなに中央財界での活動を拒んできたものの、1984年に豊田英二氏(当時・トヨタ自動車会長)が旧経団連の副会長に就いてから経団連での活動を本格化した。それ以降、トヨタは新旧経団連で最重要な地位を占めてきた。

1994年には豊田章一郎会長(当時)が経団連の会長に就任し、2002年に経団連と日経連が合併して誕生した現在の経団連の初代会長には奥田碩会長(同)が就き、経団連には「なんでもトヨタ」といったトヨタ頼みの時代は続いた。

その後も副会長ポストはトヨタの指定席であり続けた。

それが今回の副会長人事でトヨタは初めて経団連の会長・副会長ポストから外れた。これによって、「トヨタが経団連に距離を置き始めたのでは」との見方も広がる。