「もしも選ばれたときにお願いします」
——境田さんは、森さんから川淵さんとの会合のセッティングを頼まれたときに「こういう決め方はよくないんじゃないですか」とは言わなかったんですか?
【境田】いえ、私も法律家なので、これから会長選考プロセスがあることは百も承知です。森さんの意向とは関係なく、会長選考委員会が最終的に会長を推薦するというのは当然の話ですよ。ただ、選ぼうとするときに、誰も候補者が出ないってわけにはいかないでしょうと。
だから「もしも選ばれたときにお願いします」っていうお話をしたに過ぎないし、3人で会ったときにも、もちろんそういう話はしていたのですよ。そのことは、実は、川淵さんも囲み取材の冒頭で話をしているのです。なので、今回のもろもろの批判は、川淵さんがマスコミに話した発言の一部を切り取ってメディアがそのように評価をしている、とも言えるかもしれませんね。
——私は記者に対しても腹が立っていて。「こんな決め方、組織委の定款と違うじゃないですか!」と言う人間がなぜいなかったのか。川淵さんも「自分が特筆されているのはおかしい」って話しているわけだから、そういう質問が出れば自制がきいたんじゃないかと思うんですよ。
【境田】先ほど言いましたように、「もしも今後、会長に選ばれたらの話だよ」とは川淵さんは言っているんですよ。11日の5時ぐらいの会見の冒頭でね。ただ、その時点で、「決まったらこうする」とか、まだ言う必要のないことまでおっしゃたのは事実ですね。
「ガバナンスを確保するために最善の方法」
——境田さんは後継指名人事に加担する気は無かったということですか。
【境田】僕はそこに介入するとか、加担するとかのつもりは全く無くて、2人に面識のあるというところにおいて間に入って、会談の場をセットした。将来的にもし選ばれたときにはお願いしますっていう話はしたという、そこだけですね。僕ね、木村さんにはね、この件の本当に根っこのところをわかってもらいたいんですよ。
我那覇の事件を通じて思ったのが、スポーツ団体がちゃんとガバナンスを構築できていないとあんな不幸なことが起きるということ。なので、2019年には、スポーツ庁でスポーツ団体向けのガバナンスコードの立案に関わりましたし、その遵守を求めて、スポーツ団体にガバナンス改革に取り組んでもらっているわけです。
今回も、組織委員会というスポーツ団体のトップが変わらなければいけないという緊急事態下で、組織委員会のガバナンスを確保するために最善の方法は何かと考えた末に取った行動であったことをご理解頂ければと思います。
ただ、この15年近く、いろいろなスポーツ政策の立案やスポーツ団体の改革に関わってきた原点には我那覇(冤罪)事件があります。我那覇事件をもう一度起こさないため、いわば、我那覇への償いなんですよ。