「コロナ前には戻れない」という現実を突きつけられた
昭和電工が属する化学業界をはじめとする素材産業は、設備の新設・更新に多額の投資が避けられず、事業の「選択と集中」が今後一段と加速すると予想される。
国内総合化学最大手の三菱ケミカルホールディングスで、社外から起用されて2021年4月1日付で初の外国人社長への就任が内定しているジョンマーク・ギルソン氏は2020年10月の記者会見で、財務の安定化を前提に「ポートフォリオ変革に注力する。一部事業の売却もある」と述べ、事業の選択と集中が成長戦略を進める上で欠かせないとの認識を示したほどだ。
日立製作所も体質改善策に動いている。
一瞬にして「世界の市場が蒸発した」とされる2008年のリーマン・ショックの直撃を受け、日立製作所は2009年3月期に7873億円と日本の製造業で過去最大(当時)の最終赤字を計上し、「沈む巨艦」と揶揄された。
その後は、徹底した事業ポートフォリオの見直し、中核事業との関連性の薄い上場子会社の売却などで経営危機から抜け出し、見事に復活を遂げた。さらにM&A(企業の合併・買収)によって事業構造変革に取り組み、攻めの姿勢を鮮明にしている。
ここにきての一連の日本企業の事業売却は、リーマン・ショックを上回る衝撃を世界経済に与えたコロナ禍の影響といっていい。「コロナ前には戻れない」という現実を突きつけられ、不採算事業の見切りにためらう時間はない。そうしたグローバルスタンダードな企業運営に、日本企業も向き合うことになったといえる。