世界中の国が臨機応変に対応した

【鳥集】コロナ感染者や重症者に対応するために、民間病院なども協力して、機動的に医療体制を変えていくべきだという指摘は、森田先生だけでなく、多くの識者が提言しています。ところが日本医師会をはじめとする医療側からは「そんな簡単にはできないのだ」という声が聞こえてきます。

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たとえば、「院内感染が起こり、クラスターが発生すると、病院を閉鎖せざるを得ず、経営が立ち行かなくなる」とか、「病院数が世界一といっても日本は小さな病院が多く、人手が足りない」とか、「コロナの重症者を診たことがない病院が引き受けると、かえって悪い結果になる」とか。こういう話を聞いて、森田先生はどうお感じになりますか。

【森田】それには、2つ論点があると思います。まず、「できない」と言うんですが、できている国がたくさんあるわけですから、そこを見習って、どうすればできるのかを考えるのが当たり前ではないでしょうか。コロナに機動的に対応できなくて、世界中が困っているというなら話は別です。しかし、多くの国は臨機応変に対応して、機動的に動けています。

【鳥集】森田先生がよく例に挙げておられるのが、スウェーデンですね。

【森田】はい。どうしてスウェーデンを例にしているかというと、突出して優れているわけではないんですが、一般病棟をコロナ用に転換した数などが、きちんとデータとして出ているからです。たぶんドイツでもアメリカでもイギリスでも、それなりに対応していると思いますよ。

コロナの重症患者はがん専門医でも対応できる

【森田】スウェーデンで外科医として働き、ツイッターで発信している宮川絢子先生に聞くと、彼女が働くカロリンスカ大学病院では感染のピーク時には外科病棟がすべてコロナ病床に転換され、全体でも半数くらいがコロナ病棟になったそうです。そのため、通常のオペ(手術)はすべて延期となった。

もちろん、外科病棟には感染症の専門家なんていません。じゃあ、どうしているかというと、感染症専門医が毎日1回まわってきて、何をすべきか指示してくれる。コロナの重症患者でも、よほどのことがない限り、それぐらいで対応できるんです。

【鳥集】実は、がん研有明病院でもコロナ患者を十数名受け入れていて、がん専門医がローテーションを組んで担当しているそうです。

最初はどうすればいいかわからなかったけど、毎朝のカンファレンスで感染症や呼吸器の専門医の指示を受けながら対応している。その指示を聞いていると、対応の仕方が徐々にわかってきたと、取材させてもらった副院長の大野真司先生(同院副院長兼乳腺センター長)は話していました。

つまり、コロナの重症患者はがん専門医でも対応できるということです。ただ、がんの患者さんなどは、手術が延期されたら、すごく心配になるでしょう。