「技術は中立」と言い切れるほど、物事は単純ではない

【江間】それが幸せな社会なのか不幸せな社会になるかは技術思想の問題や、技術と人との関係性を私たち一人ひとりがどう受け止めるかという価値の議論になってくると思います。技術を作る側がこういう社会がハッピーだよねと言ったとしても、その社会像の中で見落とされているステークホルダーはいないだろうか、と。そうしないとある人にとってはユートピアでも、見落とされている人たちにとってはディストピアになってしまう。

【三宅】そうですね。江間さんとの対談を通してわかったことは、科学技術社会論は人工知能の研究に必要だということです。つまり、技術の力で社会がよくなるとして突っ走る人が必要である一方、それを逆の立場から調整するみたいな強い力も必要です。この二つがせめぎ合いながら未来が創られていくというのがよいのではないかなと思いました。

写真=iStock.com/The_World_Apprentice
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【江間】技術は中立でAIにはポジとネガ、両面の可能性があると考える人もいますが、物事はそんなに単純ではありません。ポジネガのようにくっきりと善悪付けられるものでもなく、また技術を使うのは人間であるので、誰がどういう目的でどう使うのか、誰の目線で技術を見るのかによっても相対的にAIと人が作り出す社会の評価は変わってきます。

だからこそ開発段階からさまざまな可能性について、多少気にしすぎといわれても考えていくことが、社会科学者の役割と責任だと思います。そしてその懸念をAIの研究分野の人たちにも共有していただいて、議論を重ねていくことで、むしろその制約や懸念を乗り越えるような新しい研究や価値が出てくるかもしれないと期待しています。

(構成=大内孝子)
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