それがミュージックラジオだとリクエストになるが、日本のようにハガキやメールでリクエストする習慣は生まれなかった。リスナーがラジオ局に電話し、それも「愛する○○ちゃんに捧げます。アイラブユー」のようなメッセージを、曲をかけている間にDJが自分で録音・編集してオンエアする。

このリクエストスタイルは、インターネットの時代になり音楽メディアがパンドラやスポティファイが主流になってからは廃れたが、トークラジオは年配リスナーを中心にしっかりと影響力を残している。特に保守系の政治トークラジオの影響力は無視できない。トランプ前大統領は、トークラジオがなければ大統領になれなかっただろうとまで言う人がいるほどだ。

地方の年配保守層を中心に支持されている

トランプ大統領誕生の立役者は、伝説の保守トークラジオ・ホストのラッシュ・リンボーだ。先日がんで亡くなったが、機関銃のような過激なトークスタイルで、半世紀にわたり保守政治を支持し続けてきた象徴的存在で、リベラル寄りのマスメディアに楔を打ち込み、保守ケーブルテレビのフォックスニュースを始め多くのメディアや番組にも大きな影響を与えた。トランプ氏が出馬し、多くのマスメディアが彼を泡沫候補扱いしていた間もリンボーが先頭に立ち、保守系トークラジオが年配リスナーを中心にコアサポーターを生み出していった。

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スピーディーに、しかも気軽に議論を交わすことができる音声メディアとしてのラジオは、ソーシャルメディアの時代になっても地方の年配保守層を中心に支持され続けている。

若者世代にヒットしたポッドキャスト

一方、こうした地方の保守層とはライフスタイルが違う都市のミニレアル世代にリーチしたいラジオ各局が注目したのが、ポッドキャストだった。

2000年代に生まれたポッドキャストは新しいものではないが、アメリカでは、長いこと素人が作るオーディオ番組というイメージから抜け出すことができなかった。しかし発信したい若者たちが、ラジオ以上に多様でニッチな番組を手作りし、個人ブログのオーディオ版のような形で定着したのである。

それを、ラジオ局のプロたちがすでにある人気番組をそのままポッドキャストに移行したり、そのノウハウを使って犯罪ドキュメンタリーなどの新たなヒットプログラムを開発したりすると、ニッチなヒット番組が次々と生まれた。スマホや、アメリカでは多くの家庭に普及しているスマートスピーカーで好きな時間に好きな番組を聞ける利点がミレニアル世代を中心に受け、2010年代末に突然ブレイクした。