またパンデミックや大統領選などを通じて社会的意識が高まった若者の間で、ニュースメディアとしても注目されるようになっている。3年間でユーザーは4割増加、2019年にスポティファイがポッドキャストへ本格参入したことも大きな話題を呼び、2020年にはアメリカ人の55%が1回は聞いたと答えるまでになっている。

良質な番組と素人参入の土壌が出来ていた

こうなると広告業界も黙ってはいられない。ポッドキャストへの広告出稿は年々急伸し、去年はパンデミックで伸び率が鈍ったものの、今年は10億ドルを超え3年前の3倍近くなると予測されている。

ネットのオーディオ広告は、どぎつい映像広告とは違い、耳にすんなり入って受容されやすいし、スキップされることも少ない。映像より制作費が安くスピーディーに作れるメリットもあり、費用対効果が高いものとして評価されている。

クラブハウスがブレイクする直前のアメリカは、日本とは違いポッドキャスト花盛りの環境が生まれていた。プロによるコンテンツ価値の高い番組作りと、喋りたい素人がポッドキャストを次々に世に送り出す土壌が出来上がっていたのである。

なぜ、文字よりも声を重視するのか

以上のように、アメリカのオーディオ文化は、アメリカが元々持つ無限の多様性と、無類のおしゃべり好きによって定着拡大したといっていいだろう。一方で、ツイッターに代表される文字投稿よりも音声コンテンツを選ぶのはなぜなのか。

まず、アメリカ人には日本人のような以心伝心の感覚がない。言葉で伝えなければ気持ちは伝わらない。それも面と向かって目を見て話すのが基本だ。

学校でも日本の授業では先生が名指しするまで生徒は黙っているが、アメリカのクラスは先生が喋り始めた瞬間に手を挙げて質問する子がたくさんいる。また小学校から“show and tell”という、クラス全員の前で課題発表する授業があり、そこでスピーチ力が鍛えられる。

社会に出てからも控えめな方がいいと思って黙っていると、意見がない、自分の意思がない人とネガティブな解釈をされてしまう。アメリカ人にとって声でのコミュニケーションは何ものにも代えがたい重要なものなのだ。

アメリカの音声メディアは、ヒットコンテンツの生みの親

クラブハウスがソーシャルメディアに音声を加えただけのコンテンツだという捉え方をするなら、率直に言って今後は新鮮さが失われ、パンデミックが終わった段階で廃れてしまうだろう。

また、音声コミュニケーションはすでに主要ソーシャルメディアも取り入れており、Twitterは音声チャットルームの「Spaces」を、Facebookも「Live Rooms」というライブオーディオの要素を加えたし、Instagramは4人でできるライブ配信システムを導入しようとしている。

それでも筆者は、クラブハウスは生き残ると考えている。それは、アメリカにとって音声メディアは、ヒットコンテンツの生みの親になりえるからだ。