韓国から脱出する企業が増える

それに加えて、2020年12月に文政権は失業者と解雇者の労働組合加入を認めるよう法令を改正した。それによって労働組合の影響力はさらに強まるとみられる。コロナショックによる韓国の内需低迷や労働争議のリスクなどを回避し、労働コストの引き下げと素直な労働力を手に入れるために、韓国から海外に進出する企業は増える可能性が高い。

そうした展開が想定される状況は、わが国と対照的だ。近年、わが国では自動車、化粧品、日用品などの分野で中国などから国内に生産拠点を回帰させる企業が増えた。それは、世界の消費者にとって“日本製(メイド・イン・ジャパン)”が安心と安全のシンボルだからだ。同様に、独ポルシェも“ドイツ製”がそのブランド価値を支えていると考え、ドイツでの生産を大切にしている。

企業が持続的な成長を目指すためには、組織が一つにまとまることが欠かせない。個々人が集中力を発揮し、さまざまなアイデアと技術などが結合することによって企業は需要を生み出し、付加価値を獲得することができる。文政権下の韓国では企業がそうした取り組みを進めるのが難しくなっているようだ。

今後待ち受ける3つの「深刻な格差」

今後、韓国経済では経済の二極分化、回復のペースを上げる製造業とペースが上がりにくい非製造業部門の差が広がる“K字型”の景気回復が鮮明となるだろう。それを3つの点から考えたい。

まず、世代間の格差は拡大するだろう。左派の政治家である文大統領は、労働組合の意向に配慮しなければならない。それは若年層の雇用機会を追加的に減少させる要因だ。ある意味、文氏の政策運営は、自らの政権を維持するために、将来の世代に負担を先送りしているともいえる。

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次に、海外に進出できる体力を持つ企業と、そうでない企業の体力の差は拡大するだろう。韓国経済の成長に不可欠な輸出を支えるのは、サムスン電子を筆頭とする財閥系の大手企業だ。足許、大手企業は海外での収益獲得に注力しており、韓国経済の輸出依存度は高まりやすい。その一方で、韓国の内需は低迷している。感染が終息したとしても、飲食や宿泊などの非製造業の需要はコロナショック以前の水準に回復しない恐れがある。