分断と格差が広がるイギリス

11月3日にはついにイングランド全域が4週間のロックダウンに突入したが、効果はあまり上がらず、12月に入っても各種の規制が地域別にだらだらと続けられている。12月8日からは念願のワクチン投与が始まったとはいえ、全国民に行き渡るまでに1年くらいかかりそうで、急に状況が好転する兆しはない。

栗田路子・プラド夏樹・田口理穂ほか『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)。本書では英のほか、独、仏、米、ベルギー、スウェーデン、ニュージーランドについても詳しく触れている

年内休業を強いられた飲食店、通販サイトのない小売業、エンタメや旅行業界にとって今年のクリスマス商戦は、不戦勝ならぬ不戦負けだ。倒産、失職、コロナ離婚などにより、うつ病や自殺者の数も急上昇している。一方で、収入が減らなかった一握りの人々は「今年はホリデーにも行かれなかったし、外食も減ったしでお金が余っちゃって」と、新車を買い、ネットショッピングにいそしんでいる。長期にわたるロックダウン休校によって子どもたちの学力にもとんでもない差が開いてしまった。

どちらを向いても目につくのは分断と格差ばかりだ。ボリスといえば期限が迫るEUとの貿易交渉に没頭して各大臣にコロナ対策を任せっきりという印象が強く、もはやコロナ禍は天災ではなく政治的人災だという声が聞こえる。

新年には、ブレグジットだけはカタがついているだろうが、雷雲のように膨れ上がったコロナ試練が待ち受けているだろう。はがれ落ちた仮面をつけ直したらしいイギリス首相ボリス・ジョンソンは、再び前面から国民をリードし、この国を緑色の未来に牽引していくことができるのだろうか。

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