健康で現役の高齢者

長野県の医療(「長野モデル」)を、今の日本のお手本にすべき理由が、もう一つあります。それは昭和40年代の長野県と、今日の日本の状況に重要な共通点があることです。

65歳以上を高齢者といいますが、全人口に占める高齢者の割合により、社会を「高齢化社会」(高齢化率7%以上~14%未満・以下同)、「高齢社会」(14~21%)、「超高齢社会」(21%以上)と、呼び分けます。

日本は2007年に、全人口に占める高齢者の割合が21%を超え、世界で初めて超高齢社会になりました。

昭和40年代の長野県をみると、若者は仕事を求めて都会に出てしまい、全国に先駆けて高齢化が進んでいて、65歳以上の住民が23%に達する「超高齢社会」となっていました。

今の日本全体の縮図が、50年近く前の長野県には、既に出来上がっていたのです。それにもかかわらず、50年後の現在、最長寿県となっているのです。

実は、長野県は長寿なだけではなく、高齢者の就業率が26.7%で、これも全国1位です。この数字は全国平均を大きく上回っており、高齢者の就業率が最も低い沖縄県の約2倍にも達します。

すなわち、寿命が長いだけではなく、健康寿命(自立して生活をおくれる年齢のこと)も長く、男女共に全国1位なのです。

健康で長生きという、超高齢社会を迎える日本の、まさにお手本なのです。

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予防医療は減塩運動から始まった

日本の死亡原因の第1位は、長年「がん」です。長野県は、今でも脳卒中による死亡率は全国でも高い方ですが、それでも最長寿県であるのは、がんによる死亡率が全国で一番低いからなのです。

では、長野県はがんに対する治療対策がよっぽど進んでいるのだろうと思われるかもしれませんが、実は長野県は、多くの都道府県が持つ「がんセンター」がない、全国でも数少ない県なのです。

一般の病院数も47都道府県中33位と平均以下です。

一方、県民のヘルスケア、病気予防を担う公民館の数は全国1位で、保健師さんの数も全国2位です。

長野県の成功の秘訣は、病気になってからの医療ではなく、病気にならないようにする、「予防医療」にあると考えられます。

今では「長野モデル」と呼ばれる長野県のこうした医療は、佐久市に立て続けに赴任した、地域医療に熱心な医師らが始めた「減塩運動」からスタートしました。