GAFAMをはじめとする情報技術やAIをつくる企業が明日の勝者になるのは間違いない。だが、巨大IT企業による情報の独占を解消するため、世界レベルでの改革を断行しなければならないだろう。たとえば、これらの企業の解体である。過去には、石油会社、鉄道会社、電気通信会社が、同様の理由で解体された。今日では、中国政府でさえも自国の巨大IT企業の活動に恐怖心を抱いている。

命の経済を理解する者がコロナ後の勝者になれる

今回の危機後に「勝ち組」になる部門、すなわち、私が「命の経済」と呼ぶ部門はたくさんある。今回の危機で勝利するのは、これらの部門に経営資源を集中させる国だろう。

では、これらの部門とは何か。まずは、当然ながら健康を守る部門だ。病院、医師、看護師だけでなく、医療産業全般だ。この観点から見ると、日本は他国よりも、製薬産業、人工装具、医療機器など、健康を守ることの重要性を深く理解している。今後、健康を守る部門に対する公的および民間の需要は急増する。

健康と関連して、清潔を保つ部門もきわめて重要だ。今回の危機が中国の武漢市の不衛生な生鮮市場から始まったように、水、食糧、食品売り場の安全は健康を守る要だ。そして「命の経済」に属する食糧部門の安心の前提になるのは健全な農業である。

教育部門もきわめて重要になる。第一の理由は、「命の経済」という新たな部門で働く人材を育てる必要があるからだ。また、遠隔教育を拡充しなければならないからでもある。教育、職業訓練、転職支援のための研修は必要不可欠になる。

デジタル化に関連する部門も重要性を増す。今後、世界経済は抜本的にデジタル化される。デジタル関連企業は「命の経済」に属する。

研究も分野を問わず重要になる。これまでに述べた部門の発展を担うのは研究だからだ。

温室効果ガスを排出しないカーボンフリーなエネルギー部門も「命の経済」に含まれる。つまり、再生可能エネルギーと次世代型の原子力エネルギーだ。

治安維持も「命の経済」に属する。われわれの社会は安全でなければならないからだ。

ジャーナリズムも「命の経済」に属する。われわれの社会は民主的でなければならないからだ。中国の例からもわかるように、民主的な社会でなければ、今回のような危機には対処できない。

効率的な社会を築くには、民主主義、情報開示、真実がきわめて重要になる。したがって、民主主義の道具ともいえる報道の自由は「命の経済」に属する。

これまでに述べた部門に加え、芸術、文化、保険、金融なども「命の経済」に属する。保険はリスクを社会的に均衡させるため、そして金融はこれらの投資を賄うために重要だ。ただし、求められるのは、経済の寄生虫のような投機的な金融でなく、「命の経済」のさまざまな部門を育成するための、国民の預金を運用する金融だ。