怒りの2つめの理由は、2020年初頭、中国の一都市で発生した感染症は爆発的に広がった際、ヨーロッパ諸国を含め、世界中の多くの政府がパニックに陥り、中国の独裁型対応に追随したことだ。初動を完全に誤った西側諸国は中国を模倣して都市封鎖を決断し、自国の経済活動を仮死状態へと追いやった。中国政府のSNSの検閲などの情報統制が今回の世界的危機の引き金になったという。今回の危機により、発展途上にある民主主義は弱体化し、当局による国民生活の徹底した監視体制である「超監視社会」が台頭する恐れがあると危機感を募らせる。

怒りの3つめの理由は、多くの為政者が国民の健康維持は国にとって負担ではなく財産なのだと理解してこなかったことだ。医療や介護の現場に対する財源は削減され、今日、看護師をはじめとして、医療現場は過剰な負担を強いられている。国民の命を大切にしないことに対する、この怒りは「命の経済」というコンセプトにつながる。「命の経済」については後ほど述べる。

コロナ危機の次は世界経済が崩壊する

世界各国では、国の支援策が公的債務を急増させている。この政策は将来に負担を課すことになる。経済の崩壊を防ぐために、民間銀行とこれを支える中央銀行が無制限に信用供与している。経済がグローバル化して以来、この異次元の政策を真っ先に導入した国はご存じのように日本だ。つまり、今回の危機により、世界の「日本化」が始まったのである。だが、この政策により、将来世代や社会的弱者にしわ寄せが生じる恐れがある。

また、自動車、航空機、工作機械、ファッション、化学、プラスチック、化石燃料、ぜいたく品、観光などを中核とする現在の経済モデルは持続的でない。問題を先送りにしながら経済をまかなうには、政府と中央銀行は拠出を増やし続けなければならない。公的債務は毎年増加し、最も信頼のある中央銀行であっても、最終的には行き詰まる。

国民の命を大切にせず、環境に配慮しないこのような経済モデルでは、人々は孤立し、精神障害、暴力、飢餓、そして思わぬ病気が多発するだろう。このままでは、いずれ未曽有の金融危機が発生する。零細企業から大企業へと順に苦境に陥るが、国の支援はいずれ限界に達する。