関ヶ原を境に、東日本は男余り

【中野】男性の格差社会ということを考えると、やはり女性側に「ある程度以上の層を選びたい」という欲が出るわけですよね? どのあたりが結婚できる層なのかを判断する場合、ちょっと嫌なことを言いますが、おそらく社会経済的地位で線引きすることができるでしょう。その線よりも上の層の男性人口と女性人口との引き算をすると、その分だけ女性が余りますよ、と。これがざっくり計算した場合の女性の未婚数という形になっているのかもしれませんね。

【荒川】そうですね。未婚者の年齢だけではなく、エリア別に見ても特徴が出てきます。

次の図表5は、都道府県別に男余り状況を色づけして日本地図にマッピングしたものです。男性が多く余っているエリアは薄い色、女性が余っているエリアは濃い色。関ヶ原あたりを境に東日本が男余りになっているんですね。一番男が余っているのが茨城県です。次に栃木県で、3位が福島県。福島は東北ですけど、なぜか北関東で男が余っている。

荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』より

このマップは20代、30代で抽出したものです。日本全国が男余り現象であることは間違いないんですが、20代、30代で抽出すると、なぜか東日本と西日本にきれいに分かれる。

でも、東日本の中で東京だけは濃い色、つまり女性の数が多いんですよね。東京にいると、それほど「男余り」ではないんです。ちなみに、次の図表6は各都道府県の2009年と2019年の時点で人口増減を比較しています。いま、「東京人口一極集中」といわれていますね。図表で見ると明らかなんですが、日本の人口は減り続けているのに、1都3県は人口が爆増しています。あと、愛知と福岡、沖縄も増えています。

荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』より

【中野】大都市圏だけですね。関西圏はそうでもないんですね。

【荒川】関西圏は減っているんですよ。

【中野】大阪は、女性だけ増えて男性は減っているんですね。

【荒川】はい、グラフでは見づらいかもしれませんが、大阪は男性が700人減っていますが、女性は3万人も増えている。もう、仕事があるところにしか人が集まらないっていうことですよ。

【中野】確か江戸時代は、江戸には男性が女性の倍くらいいたんですよね。

荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

【荒川】江戸はそうでした。現代の東京は逆で、働きに来る女性が多いということでしょう。東京に出てきてそこそこ収入を得るようになったら、このまま一人でも生きていける、あるいは仕事が楽しいから結婚や子どもはもういいかとなるのかもしれません。

ちなみに、大阪や福岡も女性が多いのですが、結局、仕事があるところに女性が集中します。飲食、販売業、サービス業といった仕事です。そして、工場地帯には男性が集中する。住むエリアで変わるんですよね。だからといって、女性が茨城県に行ってもモテモテになるわけでもないし、福岡に男性が行ったからってモテモテになるわけではありませんが。

【中野】顕著ですね。東京・神奈川・千葉・埼玉以外は、人口は増えていても微増。結局ほとんどが減っていき、増えているところだけにより集中していくんですね。「コンパクトシティー」といわれていますが、ほうっておいてもコンパクトになっていく。これは傾斜配分すべきだというのもわかります。

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