テスラは11日間でトヨタの時価総額分の株価が上昇

こうした動きはすでに予言されていた。現在、その先頭を走るのが米テスラだ。

現代自動車がアップルとの提携交渉をしていると認めた同じ1月8日の米株式市場。EVのテスラの株価が初めて11日連続で上昇した。

8日のテスラ株の終値は前日比8%高の880ドル02セント。2010年の上場来初の11連騰で、史上最高値も塗り替えた。この11日間だけで24兆円強も増え、時価総額は86兆円を超えた。日本で最も多いトヨタの時価総額(約26兆円)に相当する金額分、評価が上がったことになる。

「1日の株価の上昇でトヨタが買収できてしまう」(大手証券アナリスト)規模だ。

テスラは2020年に合計3回増資し、1兆円以上の資金を調達した。増資をしても株価は崩れるどころか急騰を続けており、成長投資の原資を容易に集められる。

米ブルームバーグ通信によるとテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の資産も、保有するテスラ株の急騰で21兆円近くに膨らみ、「マスク氏のポケットマネーでトヨタ株の過半を買えてしまう」(同)というほどに期待を集めているのだ。

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イーロン・マスク氏の本音は「トヨタなど眼中にない」か

トヨタと米ゼネラル・モーターズ(GM)の合弁工場を譲り受ける形でテスラがEVの生産を開始したのは2008年のリーマンショックの直後だ。リーマンショックでGMが経営破綻し、GMがトヨタとの合弁工場から離脱した後に入ってきたのがテスラだ。

その際、トヨタもテスラと提携、共同でEVの開発を進めたが、「充電スタンドなどが未整備の中でEVは時期尚早としてエンジン車やハイブリッド車(HV)にこだわった」(テスラ幹部)として、提携を解消した。

当時、トヨタは「テスラは所詮、車作りの門外漢だ。まともな車を作れない」と、相次ぐ生産トラブルや車両の不良に遭遇していたテスラを皮肉った。しかし、それから10数年たった今、マスク氏は民間で初めて宇宙船「スペースX」の有人飛行に成功するなど、「ものづくり」の分野でトヨタをあっという間に抜き去った。マスク氏にすれば「トヨタなど眼中にない」というのが本音だろう。