専用工場ではトヨタ生産方式を取り入れた

あの当時は、かんばん方式と言っていた。トヨタがジャスト・イン・タイムで生産をしていたことも知っていた。先ほど言った伸銅品の専用工場は、トヨタ生産方式を取り入れて、ジャスト・イン・タイムの生産体制にしたくらいですから。

野地さんの『トヨタ物語』を読んであらためて勉強になった。ジャスト・イン・タイムも自働化も言葉としては聞いていたけれど、導入の背後にこれだけの努力と長い時間がかかっていることは知らなかった。あらためて感慨深く読みました。

実は、本を見た時、「こんな分厚い本をいったい誰が読むんだ」と思ったけれど、面白くて、2日間で読んじゃった。野地さんもゴルフばっかりして、遊んでいるのかと思ったら、ちゃんと仕事をしているんだなあと、そちらも感心しました。

写真=iStock.com/ANGHI
※写真はイメージです

ビジネスパーソンが役に立つトヨタの要諦

この本を読んで、ビジネスパーソンは「ここを読めばいい」という点がいくつかある。たとえば将来の予測についてです。

企業のなかには将来の予測にやたらとお金をかけたり、調査に熱中しているところがあります。しかし、この本によれば、複雑な世の中になったら、10年先の予測は当たらない。それよりもリードタイムを短くして、変化に適応できる体質になっておくことが重要だと。確かにそうですよ。

加えて、考える人間になれということ。毎日、研鑽に励まなければ、時代の変化についていけないと言っている。当たり前のことです。しかし、当たり前のことを実行するのは簡単ではない。

どうして、僕がその個所を大切と思ったかと言えば、ドラッカーの言葉を思い出したからなんです。『ドラッカーの講義』という本にあるのだけれど、彼はこう言っている。

「知識は磨かれ、鍛えられ、そして育まれなければならない。それを怠れば衰退あるのみ」

トヨタ物語』の内容を集約すればドラッカーの言葉に現れている。大学の教授でも長年、同じことばかり教えていれば自分の言葉に白けてしまうでしょう。誰もが知識を磨き、研鑽を続けなくてはならない。

日本企業はまだまだムダが多い

あの頃、仕事のカイゼンも自分なりにやっていた。この本には「カイゼンには終わりなし」と書いてあるけれど、僕も現状維持は退歩と考える方だから。カイゼンして労働環境をよくしていかないと、生産性は上がりません。僕自身、実感しています。

たとえば、働き方改革だけれど、それは自分の仕事が楽になる方向で考えなきゃならない。電子化、IT化が進んで、仕事は以前よりも楽になっているはずなんです。