「ケアの社会化」は失敗し、幸せそうなのは人材業界だけ

【藤井】ケアワークを社会化すること自体の発想はよかったと思うし、何より必然的なことだったと思いますね。

中村淳彦、藤井達夫『日本が壊れる前に 「貧困」の現場から見えるネオリベの構造』(亜紀書房)

でも中村さんの話を聞いていると、制度的に破綻しつつあるようにも思います。急速に進む高齢化と少子化を目の前にして、労働力は今後ますます不足するので、社会としては、女性にも働いてもらいたい。

家のなかで夫や親のケアをしているだけでは、なんの価値も生まないのだから、老人介護を社会全体で共有し、その介護から解放された女性たちを家庭の外で労働力として活用する。

こんな、生産中心主義の発想もケアの社会化に賛同した官僚たちの側には当然あったとは思います。

他方で、フェミニストを中心にケアの社会化を推し進めようとした人たちのなかには、もっと崇高な理念もあったはずです。社会連帯の強化とか、ケアの脱シャドウ・ワーク化とか、女性の自由の増進とか。

【中村】介護に価値を見出そうとしたのは、この二〇年間でやり切ったでしょう。

結局、失敗だと思う。また、一部の才能がある人が地域をつくることに創造性を見出しても、凡人と行政が足を引っ張る。儲かって幸せそうなのは人手不足の隙間をついた人材会社だけで、かなり厳しい結果となっていますね。

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