実は大体のプチぼったくり店は争点をクリアしている

2015年頃の歌舞伎町は、ぼったくり被害がものすごく多いと言われていた。当時、東京弁護士会が週末になると街を巡回し、客引きや店側、通行人などにぼったくりに気をつけるように呼び掛けをしたり、「客引きには付いて行くな」と、聞きやすい著名人の声を使った街頭アナウンスを1日中繰り返していた。

しかしぼったくりの被害が減ることはなく、毎日のようにぼったくりに遭ったという客とお店の人間が連れ立って歌舞伎町交番に列をなし、交番の前は人だかりができていた。

争点は、事前に料金説明をし、目に入るところに料金表があったかどうか? 客が了承の上での料金であったか? 「料金システムを説明した」という店側の主張と、「聞いていない」という客の主張の食い違いだ。警察官も、それが「ぼったくり」に当たるのかどうかという議論に付き合わなければならず、大変だったと思う。なぜなら、事実と主観が入り混じることで、綺麗に線引きができず、みなが第三者として警察官を求めていたからだ。

2000年に「ぼったくり防止条例」が施行されたが、大体のプチぼったくりと言われているお店は、問題視されている点をクリアしていることが多い。店側は揉めることに慣れているのだ。

飲食店全般において、料理や飲み物はその都度注文して最後にお会計をすることの方が多い。そして会計が思ったより高い・安いというのは誰でも経験があることだろう。しかし、キャバクラやホストクラブにおける、その「思ったより高い」と思わせる要因は実は明確だ。なぜなら意図的にそうしている側面があるからだ。

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「料金の計算方法を複雑にする」という戦略

先ずは客引き、いわゆるキャッチに「○○円で遊べます。でもそれ以外は別料金です」という説明をさせる。例えばこんな感じだ。「1時間3000円でサービス料も消費税も込みで焼酎は飲み放題。ただし、1時間以降は通常セット料金に自動延長で、女の子のドリンク代、場内指名料などは別料金になります。そのすべての料金にはサービス料、消費税が掛かるという形になりまーす」

テレビやぼったくられ経験者の言う「ぼったくり」の原因はこの「ただし、」以降の部分。そう「サービス料」だ。サービス料とは、飲食店やホテルなどサービスを提供する施設で、チップの代わりに対価に上乗せされる金銭のことを言う。外国で言う「チップ」と似たものだが、チップはサービスを受けた側が払うか払わないか、いくら払うのかを決められる。しかし、サービス料は合計金額に上乗せされ、請求されるので客側には決定権がないのである。

水商売の業界では、小計と呼ばれるメニュー表に記載されている金額に、サービス料と消費税を加算したものが最終的に客に請求する会計になる。例えば、ホストクラブでは35%~50%、キャバクラでは20%~35%がサービス料の相場と言われており、そこに消費税を加算するのだ。

それだけ聞くと、そんな問題か? 高級レストランでも同じだろうと思うかもしれない。しかし、もう少しいろんな要素があるのが夜のお店なのだ。テーブルチャージ・指名・場内指名などなど……。例えば、図表1のような料金体系の店に20時に入店するとしよう。

出所=『新宿・歌舞伎町