スポーツ各紙も“アーモンドアイ祭り”

競馬史に残る人気者だったハイセイコーが引退したとき、寺山修司はこう詠った。

「ハイセイコーがいなくなっても全てのレースが終わるわけじゃない。人生という名の競馬場には次のレースを待ち構えている百万頭の名もないハイセイコーの群れが朝焼けの中で追い切りをしている地響きが聞こえてくる」

そしてこう結んだ。

「だが忘れようとしても目を閉じるとあのレースが見えてくる。耳を塞ぐとあの日の喝采の音が聞こえてくるのだ」

このジャパンカップは競馬ファンだけではなく、コロナ禍で自粛生活を余儀なくされている人たちにも長く語り伝えられることだろう。

翌日のスポーツ紙(私が見たのはスポーツニッポン、日刊スポーツ、スポーツ報知だった)は、一面と最終面全面をアーモンドアイが飾った。競馬史上初めてのことではないか。

ルメールは、「アーモンドアイがいなくなっても、その仔どもにまた乗れる。楽しみです」といった。

たしかにそうだが、アーモンドは牝馬だから、種牡馬のように、何百頭も仔どもを送り出せるわけではない。

名馬から必ずしも一流馬が出るわけではないが…

馬は受胎してから産むまでに約340日(11カ月ほど)かかる。順当にいっても年に1頭。

ちなみに昨年、惜しまれて亡くなった牡馬のディープインパクトは、生涯で1400頭の仔どもがいるといわれる。種付け料は1回4000万円だったから、ディープが稼いだおカネは天文学的な額になる。

アーモンドが10年現役で産んだとしても10頭程度。その中からコントレイルやデアリングタクトのような三冠馬が出るだろうか。

アパパネ、ジェンティルドンナ、牝馬でダービーを勝ったウオッカなどの名牝も繁殖牝馬になっているが、まだ超一流馬は輩出していない。

牡馬牝馬を問わず、名馬から必ずしも一流馬が出るわけではない。

アーモンドアイは繁殖牝馬になっても傑出した存在になり、名馬を世に送り出してくれることを期待したい。

ありがとう友よ、さらばアーモンドアイ。

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