バイデン政権は日本の独自外交、抜け駆けを許さない
安倍首相は日露平和条約交渉を動かすため、2016年にも訪露を計画したが、オバマ大統領は安倍首相に電話し、「今ロシアと対話すべきでない」と横やりを入れた。しかし安倍首相は、今度は米側の制止を振り切ってロシア南部のソチを訪れ、プーチン大統領と会談。北方領土問題の「新しいアプローチ」や対露支援の「8項目提案」を行ってプーチン大統領を喜ばせた。
このように、2度にわたり安倍首相に訪露中止を求めた仕掛け人が、米政府のウクライナ外交の責任者、バイデン副大統領だったことは容易に想像がつく。
その間、安倍首相は2015年6月、ウクライナを訪問し、下水処理場改修などで約3000億円のウクライナ支援を表明した。ウクライナに対する援助としてはG7で最大で、ウクライナ支援を米国にアピールして訪露の許可を求めたものとみられている。
結局、安倍首相悲願の北方領土問題の交渉進展をはじめとする安倍・プーチン交渉は破綻した。だが、「同盟国の結束した対露・対中外交」を公約に掲げるバイデン次期政権は、今後とも日本の抜け駆けを許さないだろう。
月5万ドル(約500万円)の報酬を受けたバイデン氏次男
先の「ニューヨーク・タイムズ」の調査報道によれば、バイデン氏はウクライナへの執着について、「世界に変化をもたらすという少年時代からの夢の一環。政治家としてのレガシーにしたいプロジェクトだ」と周辺に語っていたという。しかし、ウクライナへの執着は、それだけが理由ではないかもしれない。
一連のウクライナ訪問には、次男のハンター・バイデン氏が必ず同行してきた。
ハンター氏は、2014年4月、ウクライナのエネルギー最大手、ブリスマ社の取締役に就任した。同社のプレスリリースには「法務部門を担当し、国際業務を支える」と書かれている。
結局、ハンター氏は2019年4月までの5年間ブリスマ社の取締役を務め、非常勤ながら月5万ドル(約500万円)の報酬を受けた。経済破綻したウクライナの平均賃金は300ドル程度なのだから、この報酬は何と平均賃金の166倍以上ということになる。エネルギーの知識もないハンター氏がいかに破格の報酬を得ていたかがわかる。