重症者の増加に慌てるのは意味がない

もうひとつ思い出してほしいのはWHOの発表である。

2月17日、WHOのテドロス事務局長がスイスのジュネーブ本部で記者会見し、中国から患者4万4000人分のデータが提供されたことを明らかにするとともに感染状況についての見解を示した。

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「中国のデータを分析した結果、致死率はおよそ2%で、SARS(サーズ)やMERS(マーズ)ほど致命的ではない。80%以上の患者が軽症で回復している」

国立感染症研究所によると、2002年から2003年にかけてアジアで流行し、8098人の患者を出してそのうち774人が死亡したSARS(重症急性呼吸器症候群)の致死率は9.6%だった。2012年以降流行が続いているMERS(中東呼吸器症候群)の致死率は34.4%となっている。

このWHOの見解も、いまでも変わらないし、しかも日本の致死率はさらに低くなっている。問題はテドロス氏の次の指摘である。

「14%の患者に肺炎や息切れなど深刻な病状がみられ、5%の患者は呼吸困難や多臓器不全など命に関わる病状になっている」

こうした重症者への治療方法や対応は次第に分かってきている。静かに侵攻して命を奪う「サイレント・ニューモニア(沈黙の肺炎)」や血栓症などの「血管障害」、免疫システムが暴走する「サイトカイン・ストーム」がどんな患者に発生するかは解明されている。

よって重症者の増加に慌てるのは意味がない。新型コロナは気道・呼吸器感染症で冬場に流行する。感染が拡大すればそれに応じて重症者の数は当然、増える。

産経社説は「感染拡大が止まらぬ以上、見直しは当然」と主張

11月22日付の産経新聞の社説(主張)は「都道府県の一部が感染急増段階の『ステージ3』に入りつつあり、政府分科会の尾身茂会長は20日、札幌市について『ステージ3に入っている』と語った」と指摘した後、「このように感染拡大が止まらぬ以上、見直しは当然だ。陽性者が出た医療、介護施設などの入所者やそこで働く人々全員を対象に国の費用で新型コロナの検査を行うことも評価できる」と訴える。

感染が拡大していることは間違いない事実だが、だからと言って「当然だ」と見直しを過大評価するのは安易だろう。

新型コロナは新型ゆえに未知の部分が多く、決して侮ってはならない。だが、8割の感染者が他人に感染させていないし、感染しても80%以上が無症状あるいは軽症で治癒している。しかも日本をはじめとするアジアの人口100万人当たりの死者数は、欧米に比べて桁違いに少ない。