「Who」より「Why」の洞察力

人気シリーズの『相棒』が映画になった。主演の水谷豊、及川光博に加え、小西真奈美、宇津井健らがゲストとして登場。犯人役の小澤征悦の演技が秀逸。©2010『相棒-劇場版II-』パートナーズ

『相棒』では、捜査一課が考える犯人像を右京がくつがえす展開がよくある。捜査一課が「誰が殺したのか」というフーダニット(Who done it?)に目が向くのに対し、右京は「なぜ被害者は殺されなければならなかったのか」というワイダニット(Why done it?)のほうを重視するからだ。

「Who」を問うと、誰が被害者を憎んでいたかといった顕在的な動機に目を奪われる。一方、「Why」を問うと、被害者の過去の言動すべてに潜在的な動機が潜んでいることがわかる。そこをたどると思わぬ犯人像が浮上する。

ビジネスでも「誰が買うか」と考えると、今ある顕在的なニーズばかりに目が向くため、過去にない新商品については「市場が存在しない」と反対しがちだ。一方、「なぜ買われるのか」を考えると、新しいコンセプトの向こうにこれまで見えなかった潜在的なニーズや顧客を見つけることができる。

女子高生と経営学を結びつけたベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』も「誰が読むか」と問うたら生まれなかっただろう。

人が何かを行うときは必ず動機がある。だから新しい動機を用意すれば、それを行う人が現れる。「誰が買うか」の視点も大切だが、それにとらわれず、「なぜ買われるか」を問う問題意識を右京の発想から学ぼう。

※すべて雑誌掲載当時

◎テレビ朝日「相棒」
  オフィシャルサイト:
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
◎「相棒-劇場版II-」
  オフィシャルサイト:
http://www.aibou-movie.jp/

(岡倉禎志=撮影)