まだあった「嫁ぐ」という考え方……結婚相手の「家」を問題視する人々

眞子さまの「結婚は生きていくために必要な選択」だというお気持ちを受けてもなおインターネットでは「眞子さまはだまされている」「結婚には反対」という意見が多く見られます。反対意見のなかで目立つのは「小室さんの家族」を問題視する声です。

週刊誌が取り上げてきた母親の金銭トラブルや父親および父方家族の自殺が「結婚に反対する理由」として挙げられており「そんな問題のある家族がいる人とは一緒になるべきではない」という意見が幅を利かせています。

ただ上記に書かれているようなことはあくまでも彼の「家族」の話であり、小室さん「本人」がしてきたことではありません。

戦後にいわゆる「家制度」が廃止されてから70年以上が経ちました。「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する」と日本国憲法(日本国憲法第24条1項)で決められており、結婚をすることは相手の家に「嫁ぐ」ことではないはずです。また結婚相手の「家族」に過剰にこだわることは差別につながるという認識も近年は社会でひろく共有されているかのように思えました。

しかしながら、今回の眞子さまと小室さんの結婚について、世間では当たり前のように「結婚相手の家族に問題があるから、結婚に反対する」という意見が21世紀、いや令和の今もなお幅を利かせているのでした。

本人の気持ちより「親」や「家」が優先される謎

制度上は廃止された「家制度」ですが、多くの人が「家」という考え方をまだ引きずっていると感じることがあります。筆者の知人の30代前半の日本人男性は先日こんな話をしてくれました。

その男性は大学在学時から8年近く、ほぼ遠距離で交際を続けていました。婚約指輪を渡し、プロポーズも済ませ、二人は結婚するつもりでいたけれど、結局は「彼女の父親の猛烈な反対」で女性の心は折れてしまい、別れざるを得なかったとのこと。

地方都市に住む女性の父親が「娘がそのまま東京で結婚することに反対で地元に帰ってきてほしかった」のも理由ですが、もっと大きな理由は、男性の弟が仕事をしていないことでした。その男性は「ずっと遠距離でしたが真剣に付き合っていたのでショックでした。それに家族も否定され……。気分はバツイチですよ」と話しました。

写真=iStock.com/Tero Vesalainen
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「長年交際して別れた」なんていう話は世界中にごまんとあり、珍しいことでも何でもありません。でも筆者がひっかかったのは「日本では弟が“仕事をしていないこと”が破談の理由になる」という点です。

筆者の出身地・ドイツではどんなに親がエリートでも「兄弟が働いていないから結婚に反対した(された)」という話は聞いたことがありません。そういう発想じたいがありません。そもそも「結婚を親に反対されたから結婚を諦めた」という話をドイツではあまり聞きません。