中国の大発展の理由

この論考の最初に日本のGDPの伸びはこの40年間で2.2倍にすぎないのに中国は約200倍だと述べた。日本がGDPで中国に抜かれたと大騒ぎをしたのはたった10年前の2010年。それが今では中国の名目GDPは日本の約3倍だ。

1981年、中国が大好きだった親友ビルジャービスが中国に旅行した後、「もう二度と中国には旅行しない」と言っていた。シャワーが無いと生きていけないほどのシャワー好きの男なのに、中国の一流ホテルのシャワーで温水が全く出なかったからだそうだ。

私も、2004年に日中友好団体の依頼で、天津郊外の大学でデリバティブの授業をしに1週間弱出かけた。部屋に置いてあったくみ置き水は、何か白いものが沈殿していて、そのまま飲めば、胃のレントゲン写真が撮れそうだった。トイレに備えつけの紙は新聞紙のようなごわごわした紙でお尻を拭けば出血しそうだった。「この国は日本に30年遅れている」との感想を持ったものだ。

それが昨年、国会議員団のメンバーの一員として中国議会を表敬訪問をした時、IT産業を中心に視察して「日本は抜かれた~」と実感したのだ。

中国の発展はまずは為替政策

私は中国大発展の最大理由は為替だと思っている。

中国は、日本が1ドル360円の円安時代から、米国の要求に屈し、必要以上の円高となり、国際競争力を失い急速に国力を落としていったのをよく見て、学習したと思う。日本の轍を踏まないように、米国のしばしばの元高要求に対してもお茶を濁す程度にしか対処していない。

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本来、通貨安だとインフレが起こるので通貨高が必要になるが、中国は人口が多く、完全雇用から起こるインフレの恐怖が無かった。それも人民元安をキープできた理由だろう。

1980年に1人民元160円もしたのが、今や、16円と10分の1だ。これで世界の工場になった。ドル円で言えば1ドル=100円だったものが1ドル1000円になったようなものだ。これなら日本も世界の工場に逆戻りできる。インバウンドは急増、空洞化した日本に工場は戻ってくるわ、世界の工場は押し寄せて食えるわ、で、日本人労働者の給料は円貨で暴騰だ。それと同じことが中国で起きた。

コロナ前に人民元が10分の1になったにもかかわらず、日本に中国人旅行客が押し寄せていた理由もわかる。

本来、通貨が10分の1になれば海外旅行など高くてできない。1ドル100円の時1000ドルのハワイ旅行は10万円だが、1ドル1000円の円安なら100万円もかかる。しかし通貨が10分の1になっても名目GDPが200倍になり、個人も200倍豊かになっていれば、国民は以前の20倍の生活ができる。だから日本への観光が可能になったのだ。