彼のインフルエンサーとしての収入の仕組みは主に2つだ。中国のKOL事情に詳しく、日本企業の対中ウェブマーケティングなどのビジネスを手掛ける「クロスボーダーネクスト」の何暁霞社長によると、1つ目は広告収入だ。

李佳琦氏が代表を務める事務所には数百人のスタッフがおり、世界中の企業から仕事の依頼が来る。彼に商品のPRを依頼したい場合、まず企業は自社の商品を李氏が代表を務める事務所に送付し、条件面の交渉をする。そこで最終的に選ばれた商品を李氏がライブコマースで宣伝する。通常、ライブコマースは10~15分程度だ。1日5~6時間ライブコマースをする場合、30~40個の商品を紹介するが、「独身の日(ダブルイレブン)」のように注目されるイベントの場合、広告費は通常よりも高く設定される。

資生堂、カルビーなど日本企業もオファー

2つ目は販売して売り上げた金額のレベニューシェアだ。通常は総売り上げ額の20%以上を報酬として受け取る場合が多いという。李氏の年収は明確には分からないが、何氏によると「2億元(30億円)以上はあるのではないか」と推測する。今春、李氏は上海市内に広さ1000平方メートルの豪邸を1億3000万元(約20億円)で購入して大きな話題となった。

中国の有名インフルエンサー李佳琦氏(李氏のウィーチャット公式アカウントより)

彼はもともとロレアルの美容部員だったが、その整ったルックスと女性目線の話術でたちまち人気となり、「买它」(マイター、Buy itの意味)という中国語のフレーズは彼の代名詞になった。彼が取り上げるのは化粧品、日用品、食品などさまざまで、日本企業では資生堂、コーセー、カルビー、龍角散、近江兄弟社などがある。

李氏や薇娅氏などのトップインフルエンサーは別格中の別格といえるが、今年の「独身の日」のセールでも、彼らをはじめ中国中の有名無名のインフルエンサーがライブコマースを行った。今年とくに目立ったのは、企業(メーカー)の担当者や経営者など、“一般人”がライブコマースを行ったことだった。今年の618(6月18日に行われる、独身の日に続く2番目に大きなセール)には、中国の有名なエアコンメーカー、格力の董明珠会長が自ら出演して話題を集め、売上高も大幅に伸ばしたことから、以後、同じような宣伝効果をもくろむ企業が、経営トップや社員を全面に出して次々とライブコマースへと参入した。

「独身の日」で売れた日本製品は?

その流れは日本にも押し寄せており、資生堂は「独身の日」に合わせ、東京本社と中国杭州のスタジオを生中継して、ブランド責任者や現地法人の担当者らがライブコマースを行った。必ずしも有名インフルエンサーではなく、企業側の担当者から直接、プロ目線での説明を聞きたいという視聴者の声に応えた格好で大好評だった。