中国は00年10月、「中国・アフリカ協力フォーラム」を組織し、経済支援を通してアフリカに中国式モデルを広める枠組みを構築してきた。
ナイル川中流域のエチオピアでは、中国が一部資金提供したと報道されている巨大ダム、大エチオピア・ルネサンス・ダムが今年7月に完成したが、下流のエジプトやスーダンと水の分配をめぐって対立が激化。
スーダンのメロウェ・ダムは09年に中国が造った巨大ダムで、エジプトのアスワン・ハイ・ダムの上流に位置するが、わずか5年で完成したことで安全上の問題が懸念されている。
ガーナでは発電量400メガワットのブイ・ダムの建設を中国が請け負ったが、建設予定地に生息するカバの救済計画がなく、漁師を水のない土地に移転させるなど、多くの問題が指摘された。川の流れが変わり、下流域の水不足も危惧されている。
中国は概して、ダム建設に伴う弊害は相手国自身で解決すべきとしており、環境保全にも無頓着だ。
環境破壊が最も顕著なのは、東南アジアを流れるメコン川だろう。チベット高原に水源を持ち、中国からミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを経て南シナ海へ注ぐ第一級の国際河川で、流域の6000万人の生活を支える貴重な水資源だ。
漁獲量「40~80%減少」の予想
ASEAN諸国は経済発展に伴い、電力不足が長年の悩みで、大型水力発電ダムの建設を望む声が強かった。だが各国の利害がかみ合わず、タイ、カンボジア、ベトナムは長らくダム開発を断念。
内陸国で発展の遅れたラオスは中国の支援を受けて大型のサイヤブリ・ダム、ドンサホン・ダムを建設し、さらに3基の大型ダムを建設中だ。
一方、この4カ国で構成し水資源を管理する組織「メコン川委員会」のメンバーでない中国は、自国の電力需要急増に伴い、独自にダム建設を進めてきた。
中国は目下、水源に近い雲南省に14基のダムを建設中で、全て完成すれば総出力2万2260メガワットに上り、広東省などの電力不足を大幅に解消できる。
だが最初に完成した漫湾ダム(1500メガワット)は、1993年の稼働直後から土砂やシルト(細かい粒子の砂)が堆積し、わずか3年で貯水池の有効貯水量が大幅に減った。その後も、大朝山ダム(1350メガワット)、小湾ダム(4200メガワット)を竣工。タイとの合弁事業の景洪ダムも稼働を開始した。