営業マンの生産性はダントツ
6月下旬の金曜日の夕刻、筆者は複数のジャーナリストと上海市内にあるカルフールを訪ねた。フランス資本の高級スーパーであるため、それなりの所得を得ているであろう上海市民のほか、欧米人の来店客が目立つ。
エスカレーターを上がり、日用雑貨売り場を回るが、どこに何があるのかがすぐにはわからない。中国語表記という理由だけではなく、入場費や棚代という“B to B(企業と企業)”の商慣行が中心のせいかもしれない。なかなか望みの商品のところに行き着けない。人気商品の補充なども十分に行われていない。
そして、最も驚かされたのは、東京から同行した女性記者たちの次の言葉だ。「トイレが汚くて、困った。2度と来たくない」「使うのをやめて我慢した」。
日本の、今回取材したコーナン、売り場面積は小さいがジップドラッグ(アライド系)やケイポートドラッグマートなどの小売店では、考えられないことだ。来店顧客を見ていない、といえよう。日本の小売業のような細やかさ、さらにP&Gジャパンの協働の思想が本当はいまここで必要なのかもしれない。
ドラッグチェーンを担当する、P&Gジャパンの30代男性営業マンは話す。
「カスタマーチームのレベルは上がり、私たちは進化している思う。1人では出せない提案をチームなら出せますし。P&Gのためではなく、ドラッグチェーンが拡大するため、ショッパーズ視点で提案して頑張っています。個人的に1番嬉しいのは、あなたがウチの担当でよかったと、言われた瞬間です」
P&Gジャパンの営業マン数は「約600人。1人当たりの売上高は5億円弱と、日本の消費財メーカーではダントツに高い」(「国際医療品情報」編集次長岩垂廣氏)。日本市場でも、知恵と提案力で外資の営業マンは成果を挙げている。欧米的な合理システムが通用しない日本市場で揉まれ磨かれたP&Gジャパンの手法は、上海などを含め複雑化していく海外市場で応用できる、ひとつのモデルになるかもしれない。(文中敬称略)