2位のルクセンブルク「金融ビジネスで発展」

アイルランドのGDPを見ると、個人消費は全体の3割程度しかなく(日本は6割)、設備投資と輸出の割合が極めて高いという特長が見られます。

設備投資と輸出の比率が高いというのは、工場や橋、道路といった公的インフラ整備が急務となっている発展途上国ではよく見られる状況で、高度成長期の日本や10年前の中国は、設備投資の比率が極めて高く推移していました。しかし成熟した先進国においては一般的に消費の比率が高まる傾向が顕著ですから、その点では、アイルランドは特殊な部類に入るのかもしれません。

生産性が2位のルクセンブルクは、典型的な金融立国です。

ルクセンブルクは、金融ビジネスを国是こくぜとしており、欧州を代表する金融センターとして知られています。金融関係のビジネスが生み出す付加価値は、GDP全体の3割近くに達しますから、まさに金融立国といってよいでしょう。同国には、スイスと並んで多数のプライベート・バンクがあり、欧州の富裕層の多くがルクセンブルクに資産を置いています。

また、税率の安さから、鉄鋼メーカーやIT企業などが拠点を構えるケースも多く、金融以外のビジネスも活発です。

ルクセンブルクのGDPを見ると、アイルランドと同様、個人消費の比率が低いという特長が見られます。一方で、輸出の割合はアイルランドよりも高く、輸出大国でもあります。ルクセンブルクにおける製造業の主役は鉄鋼ですが、同国の人口は62万人しかありません。

国の規模が小さいため、鉄鋼メーカーの輸出だけでもかなりの金額となっており、これがGDPにおける輸出の比率を高める結果となっています。

アイルランドもルクセンブルクも魅力的な税制によって金融機関の誘致に成功していますが、同時にITや鉄鋼など、製造業の誘致も行っており、これがGDPに対する輸出比率を高めています。この事例から、金融機関と製造業というのは、誘致に関しては相性がよいことがわかります。

バーベキューとワーホリで経済を回すオーストラリア

先ほどの生産性ランキングを見ると、金融+先端産業で稼ぐグループにも、製造業に特化するグループにも入らない国があります。それがオーストラリアです。15位までには入っていませんが、ニュージーランドやカナダといった国も近い形態と考えてよいでしょう。

日本ではオーストラリアは鉄鋼石などの輸入先であることから資源国というイメージを持つ人が少なくありませんが、それは同国経済の一面を切り取った姿にすぎません。同国はGDPの8割近くをサービス業で生み出す典型的な消費立国となっています。

オーストラリアは基本的にガツガツ仕事をしない文化であり、定時に仕事を終えるのが一般的です。しかも、週末だけでなく平日にもバーベキュー(オーストラリアではバーベキューのことをバービーと呼びます)を楽しむ人が大勢います。

GDPのうち個人消費が占める割合は56%と高く、設備投資の多くが住宅や商業施設、オフィスなどに振り向けられており、いわゆる工場の設備投資や知的財産への投資はそれほど多くありません。

同国では、良質な不動産を維持するため、不動産投資信託といった金融システムの整備が進んでおり、これが内需拡大に大きな役割を果たしています。一般的に消費のみで経済を回そうとすると、米国のような苛烈な競争社会になりがちですが、オーストラリアは、ワークライフバランスと消費経済をうまく両立させています。