日本は主要先進国の中で最も生産性が低い。今後、国力を高めるにはどうすればいいか。経済評論家の加谷珪一氏は「日本のような小国が目指すべきはBBQとワーホリで経済を回すオーストラリアだ」という——。

※本稿は、加谷珪一『日本は小国になるが、それは絶望ではない』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

屋外でバーベキュー
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労働生産性ランキング「上位15カ国は小国が多い」

諸外国の中で、どのような国が高い労働生産性を実現しているのでしょうか。

次の表は、2018年における労働生産性と人口を示したものです(人口については2019年)。

生産性と人口ランキング

1位はアイルランド、2位はルクセンブルク、3位はノルウェー、4位はベルギー、5位はデンマークとなっています。上位15カ国を見ると、人口が少ない小国が多いことがわかります。一般的な傾向としては、小国の方が生産性向上には有利ということになるでしょう。

もっとも、米国だけは別格で3億3000万人もの人口を抱えながら、欧州の小国と同レベルの生産性を実現しています。

米国というのは、エネルギーと食料をすべて自給することができ、先進国としては珍しく一貫して人口が増え続けるという極めて特殊な国です。日本をはじめ他国が参考にするのはかなり難しいと考えた方がよさそうです。

一方、ドイツやフランス、オーストラリアといった国々は、それなりの人口規模ですが、同時に高い生産性も実現していますから、日本にとっては参考になる部分が多そうです。

生産性1位アイルランド「貧しい部類の国が一変した理由」

では、もっとも生産性が高かったアイルランドはどのような国なのでしょうか。

かつてのアイルランドは欧州の中ではかなり貧しい部類に入り、首都のダブリンには失業者が溢れているというイメージが一般的でした。しかし1990年代以降、積極的な外資優遇策を実施し、インテルなど著名ハイテク企業の誘致に成功したことで状況が一変しました。

IT産業が経済の牽引役となり、驚異的な経済成長を実現し、あっと言う間に欧州でもっとも豊かな国の仲間入りを果たしたのです。同国は、さらに外資優遇策を強化しており、現在では、アマゾン、アップル、グーグルといったネット企業が多数進出しているほか、近年では多くの金融機関の誘致にも成功しています。

重工業はあまり活発ではなく、製薬や化学など付加価値の高い産業に資源を集中する戦略をとっており、いわゆる従来型の工業国ではありません。アイルランドは、IT産業と金融を中心に産業を育成していると考えてよいでしょう。

こうした産業政策を円滑に進めるため、アイルランドでは教育に力を入れています。

同国の大学進学率は高く、しかもダブリンにあるトリニティ・カレッジ・ダブリンとユニバーシティ・カレッジ・ダブリンは、世界の大学ランキングでもトップ1%に入るレベルを維持しています。しかも国立大学ということで授業料は無料です。

かつて英国に支配されていたことから、国民のほとんどが流暢に英語を話せることも企業誘致に大きく貢献していると思われます(むしろアイルランド語の方が不自由する人が多いといわれています)。