消費立国として成功した理由のひとつは移民政策
オーストラリアの隣国であるニュージーランドも、オーストラリアと同様、消費立国です。ニュージーランドの基幹産業は一般的なサービス業と農業であり、最先端の産業や金融ビジネスはそれほど活発ではありません。
しかしながら、ニュージーランドも先進国としての生活水準を維持していますから、工夫次第では、極めて小さな国であっても消費によって経済を回すことが可能であることをニュージーランドのケースは示しています。
オーストラリアが消費立国として成功した理由のひとつは移民政策にあると考えられます。
同国は外国人に対してオープンな社会として知られており、毎年十数万人の移民を受け入れています。移民の存在がオーストラリアの消費経済活性化に大きく貢献しているのですが、無制限に移民を受け入れているわけではありません。
かつてのオーストラリアは白豪主義を掲げ、白人優遇の移民政策を行う時代が長く続きました。しかし同国は1970年代以降、「多文化主義」に転換し、従来の移民制度を完全に撤廃しています。
その結果、世間一般では、あらゆる移民を受け入れる国というイメージが強くなっているのですが、実際には、経済に貢献する高度人材に限定した上で、移民を受け入れているという状況です(人道上の必要性から難民を受け入れる場合には、別の枠組みが用意されています)。
世界各国の若者がワーホリで毎年20万人訪れる
つまり高度人材に限定した上で移民を受け入れることによって、消費経済を活発にする戦略ということになりますが、これによって賃金が安い単純労働者が不足するという問題は起きないのでしょうか。ここをうまく解決する方策が、観光大国であることを利用したワーキングホリデーの活用です。
ワーキングホリデー(通称ワーホリ)というのは、2国間の協定に基づき、休暇を楽しむ外国人を相互に受け入れ、滞在資金を捻出する目的に限って一定の就労を認める制度です。期間は1年から2年で、原則として利用者はひとつの国について1回しか利用できません。
読者の皆さんの中にも、ワーホリを利用して海外に出かけ、現地でアルバイトをしながら滞在を楽しんだ人がいるのではないでしょうか。
オーストラリアは、留学のインフラが整っているため、諸外国の若者にとって人気の高い国となっています。今はかなり下火になりましたが、一時は日本人の若者が大挙してオーストラリアに語学留学していた時代もありました。世界各国の若者が、ワーホリを使ったオーストラリア旅行を希望するので、毎年20万人以上の若者がこの制度を使って同国を訪れ、滞在費用を稼ぐため、アルバイトなどの単純労働に従事してくれるのです。