外国人に対して社会が寛容か

つまりオーストラリアには、知的能力や体力があり、しかも単純労働に従事する意欲のある若者が、期間限定で常に20万〜30万人存在する計算になります。彼等はあくまで国際交流のために訪問していますから、1年(もしくは2年)経過すれば、ほぼ100%母国に帰っていきます。

オーストラリアはこのようにして、単純労働者が国内に永住することを回避しつつ、人手不足の問題をうまく解決しているのです。

高度移民やワーホリの受け入れを維持していくためには、外国人に対して社会が寛容でなければなりません。

かつて白豪主義を掲げていた国ですから、潜在的にはマイノリティに対する複雑な感情があるのかもしれませんが、同国ではこうした風潮は経済にとってマイナスになるという明確な認識を共有することで、意図的に多様性のある社会を構築しているのです。

日本が目指すべきは消費立国だ

日本が選択できるのは、やはりオーストラリアのような消費経済ということになると思います。

日本は製造業の国として知られる一方、個人消費の比率が6割近くに達するなど、消費の比率が高いという特長があります。これから人口が減ってくるとはいえ、現時点において1億2000万人の単一消費市場が存在している国というのはそう多くありませんから、これを有効活用しない手はありません。

加谷珪一『日本は小国になるが、それは絶望ではない』(KADOKAWA)
加谷珪一『日本は小国になるが、それは絶望ではない』(KADOKAWA)

消費立国といってもすべての製造業を捨てる必要はありません。

グローバルな競争力を維持している企業は、その事業を継続すればよく、一方で、薄利多売に陥り、競争力を失っている事業からは撤退することが重要です。その分のリソースを国内のサービス産業に充当すれば、日本の消費経済はさらに活発になります。

日本は競争力のある製造業だけを残し、残りは日本人自身の消費で経済を回す消費主導型経済にシフトするのがベストだと筆者は考えます。

しかしながら先ほどの表を見てもわかるように、消費経済で成功するためには社会の寛容さが何よりも重要となりますが、日本社会はとても寛容とは言えません。日本が豊かな消費社会を実現するためには、どうしてもこのカベを乗り越える必要があります。

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