コッターが説くリーダーとマネジャーの違い

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今回の震災で明らかになった日本のリーダーの強み・弱み

そして最後がリーダーの役割としての夢や希望の提示である。今回の震災は、文字通り未曾有の大災害であり、その意味でなんとしても、まず被災した多くの方々に安心・安全である、という感覚をもっていただくことが必要である。その点から考えると、民主党政権は、限界があるなかで、かなり迅速に対応をしているように思う。

例えば、政府は3月末の時点で、被災地などにおける安全・安心の確保対策ワーキングチームの第1回会合を開催し、被災地などにおける安全・安心確保対策の骨子を決定した。また、4月7日には、最大4兆円になる災害復旧補正予算案を出している。この点については及第点だろう。

だが、ポイントは、復旧した後で何がくるのかである。復旧までの道のりは、遠くて苦しい。途中で挫折したくもなるだろう。諦める人も出てくるかもしれない。このなかで安心・安全の復旧を提示するだけで、人々の心を引き留められるのだろうか。意欲は持続するのだろうか。ハーバード大学のジョン・コッターは、リーダーとマネジャーの違いは、マネジャーが「計画立案」「予算配分」「人員配置」によって目標を達成することがその役割であり、リーダーの役割は、「ひとつの目標へ向けて組織メンバーの心を統合することである」と言う。

夢とか希望を与えて、新たな世界をつくり上げるための力を人々から引き出すのがリーダーの役割なのである。特に今回のような危機的な状況では、“戦略”や“計画”などの左脳的な作業による目標設定では不十分で、人心の統率には夢とか希望が必要だろう。たしかに、こうした自己実現動機は、安心・安全欲求が満たされないと湧いてこないという議論もある。安心が満たされないと、とても自己実現どころの騒ぎではないということなのである。これまで多くの経営学者も主張してきた。