「国立大学の運営交付金の回復」が必要だ

そのような状況を踏まえた上で、「海外に移籍する日本人研究者が徐々に増えつつある中、日本はどうしたらいいと思う?」と聞かれることがあります。

それに対してもっとも即効性があると思われる対策は「法人化以降削減され続けている国立大学の運営交付金を回復させること」だと思われます。日本にいる研究者の友人からもそうした声を聞いています。運営交付金の回復は、硬直化している大学人事をある程度回復させるのではないかと思われます。

また、本稿執筆にあたりご協力いただいた雲南大学の島袋隼士博士からの要望として「日本の大学公募への応募にあたり印刷物の郵送が必須となっているケースが多いのは問題。基本的に電子化すべき。これは海外在住の日本人に限らず、海外からの研究者が日本の大学へリクルートする際の障壁の1つとなっている」とのご意見がありましたことも、あわせてご紹介させていただきます。

実際のところ、「日本人の基礎研究者が次々と海外に高待遇で引き抜かれている」といったような大規模な人材流出が発生しているような状況ではまだありません。また、日本に行くたびに思うのですが、やはり日本は多くの日本人にとってとても住みやすい環境です。そこは日本にとっての大きな強みだと思います。

このため、特に奇策の必要はなく、今のところは「運営交付金の回復」といった正攻法で状況はかなり改善すると思われますし、日本いる研究者の友人らのため、そして日本の基礎科学の再生のためにも、実際そういった流れとなることを心から祈っています。

日本人研究者への嫌がらせが起きている

また、本稿の最後に、私個人として述べたいこととして、昨今、在中の日本人研究者らへの事実無根の思い込みに基づく悪質な嫌がらせが日本から徐々に出てきているという残念な事実があります(「最悪拷問の恐怖…産経新聞記者によって中国“タブーメディア”に名前をさらされた話」文春オンライン)。

在中の日本人研究者らからそういった不安の声を聞くことも増えています。在中の日本人研究者の多くは、その成果を世界に向けて公開論文として発信することを使命とする基礎研究者であり、違法な技術流出や知財流出といった行為には関わりのない方々です。もし違法な技術流出や知財流出といった法的に問題ある行為をした人が本当にいるのであれば、その当事者に対して証拠と共に法に基づく対応をすべきであって、根拠なく思い込みで関係のない人たちへ嫌がらせをするのは非常に悪質な行為だと思います。

最近、中国の大学や基礎科学分野の伸びを受けてか、日本のメディアなどから中国における日本人研究者らが問い合わせを受けることが増えており、それに対して、「少しでも日本のためになれば」と在中の日本人研究者の皆さんは善意から情報発信をしているのが現状です。それに対して悪意ある嫌がらせを行うというのは、そういった情報提供の委縮につながりますし、それは日本自身にとって決してプラスにはならない行為です。

今後そういった嫌がらせがなくなり、委縮の必要なく情報発信できる状況が続くことを切に望みます。また、私自身、本稿が日本の大学および基礎科学の活性化の参考に少しでもなることを願っています。

関連記事
超人気AV女優「蒼井そら」が明らかにした反日中国人の意外な本音
「円周率とは何か」と聞かれて「3.14です」は大間違いである
妻子を捨てて不倫に走った夫が「一転して改心」した納得の理由
「製作費210億円のムーランが大コケ」中国依存を強めるディズニーの大誤算
日韓関係を改善するには、文在寅大統領に辞めてもらうしかない