夫の「また茄子買う?」発言で四半世紀の夫婦のタワーは崩壊
都内在住の会社員・A子さん(50歳)の場合はこうだ。
緊急事態宣言を受け、A子さんの出社は週2回で週3回がリモート勤務。一方、夫のB男さん(52歳)は全日リモートワーカーとなったそうだ。
そこで、B男さんは妻のいない2日間の夕食作りを請け負った。結婚生活25年で、ただの一度も食事作りをしたことがなかったB男さんは一念発起。市販の中華合わせ調味料の力を借りて「回鍋肉」と「麻婆茄子」が作れるようになる。
A子さんによれば、米も研がず、皿一枚洗わずという夫のお殿様ぶりは相変わらずだそうだが、それでも帰宅後におかずが用意されているということにA子さんは感動し、夫へ感謝の気持ちを伝えることは忘れなかったという。
そんな生活が3週間。食卓に3回目の麻婆茄子が登場した次の日のことだ。夫婦は1週間分の食料を調達しにスーパーに出向く。A子さんは茄子を手に取り、買い物かごに入れた。その時、事件は起こった。
「また、茄子、買うの?」
B男さんが怪訝そうに言ったのだ。また麻婆茄子を夫に作らせようとして買い物カゴに入れたわけじゃない。5個200円と比較的安かったのと、使い回しができる食材だから買おうとしただけだ。A子さんは夫の発言に「さも、主夫をやってます!」といった意味あいが含まれているように感じられ、心の中で「大した回数、料理をしたわけでもないのに」と毒を吐き、つい反論してしまった。
「だって1週間分(の買い物)だよ? 『また茄子?』ってどういうこと? そんなふうに言うなら、もう作らなくていいよ……」
売り言葉に買い言葉だろうか、夫は「俺、結構、やってるじゃん? そう言うなら、もうやらない!」とその場で宣言したという。
「たかが茄子」で仲良し夫婦の関係は簡単に壊れる
A子さんは、「アンタが『2種類しか作れない』って言ったんじゃん! しかも、今晩作れとは言ってない!」と怒りたかったけど、周りに人がいたのでグッと言葉をのみ込んだのだそうだ。
「夫は、これだけ(週2日)でも、ものすごく(家事を)やっている気になっているんだよね。この人は(食事作りや買い出しといった生活全般のことを)何も分かっていないってことが分かったよ」
A子さんは電話口でそう私に話した後、夫婦の関係に亀裂が走った瞬間をこう表現した。
「四半世紀の間、夫婦で積み立ててきたはずのタワーがもろくも崩れた瞬間だったわ」
たかが茄子、されど茄子。この2人の関係が修復されるかどうかは誰にもわからない。その日以来、A子さんはスーパーで茄子に見向きもしなくなったそうだ。