「冷たいジュースも飲むの?」と聞いてみると
むろん、食べ物は個人の嗜好によるところが大きく、一概にはいえないが、それにしても、「過去の常識」にとらわれて中国を見ていると、あまりの変化のスピードに驚かされることが増えてきている。
2019年夏、上海で友人とランチを取っていたときだった。中華料理とともに、友人が甘いトロピカルジュースを注文したことがあった(日本では、中華料理のランチを食べる際、一般的に中国茶か水を一緒に飲むことが多いと思うが、中国のレストランではお茶は料金が高いので、甘いジュース類を注文する人もけっこう多い)。そのとき友人が店員に「氷多めでお願いね」と付け加えたのを見て驚いたのだ。
これ以前にも、ジューススタンドやタピオカ専門店などのメニュー表には「甘さ」や「氷の量」などの項目があり「控えめ」「多め」など自由に選べるようになっていたのは知っていたのだが、それは若者の間にカフェ文化が浸透してきているから、だと思っていた。
しかし、トロピカルジュースを注文したのは40代の女性で、特にトレンドに敏感という人ではなかったからだ。思わず、その友人に「冷たいジュースも飲むの?」と聞いてみたところ、「だって、冷たいほうがおいしいじゃない?」と返されたのだ。
旅行ブームで海外の文化がどんどん入っている
その女性とはデリバリーの話題にもなった。中国がデリバリー大国となっているのは、多くの読者が知っていると思うが、デリバリーで料理を注文する際、彼女は健康のため、必ず生野菜のサラダも一緒に注文しているという。彼女だけでなく、一緒にランチを取る同僚も同じだそうで、「同僚とどのドレッシングがいちばんおいしいか、いろいろ試しているんですよ」と話していた。私はこれまで、中国人は食に対しては比較的「保守的」ではないか、と勝手に思い込んでいただけに、このエピソードを聞いて、自分の認識を改めた。
そのほかにも、「寿司や刺身を食べるときには、冷えた冷酒(日本酒)を合わせるのがいちばんおいしい」とか、「ランチはお気に入りのパン屋さんのバゲットと、自宅から持参した有機野菜のサラダ」などという声も聞いたことがあり、「一体どこの誰の話?」とびっくりさせられたのだ。