現在のオフィスについても、縮小は考えていません。ただし週5日のうち2日が在宅勤務になれば、出勤する人数は4割減になる。弊社は毎年人員を増やしてきましたが、これから4割増員するまでオフィスの増床はいらない計算になる。本来なら支払うはずだったオフィス代、すなわち「未来家賃」の削減につながるわけです。

削減した未来家賃は、私たちがパートナーと呼ぶ弊社の従業員と株主の皆様に、それぞれ50%ずつ還元する方針です。現在、渋谷地区のオフィスにかかる1カ月の家賃は約3億円。その4割が浮くので、毎月6000万円がパートナーに在宅手当として支給され、残りの6000万円が利益計上されることになります。

在宅勤務に移行してからも混乱はありません

リモートワークは社内のコミュニケーションやマネジメントが難しいという声がよく聞かれますが、GMOでは在宅勤務に移行してからも混乱はありませんでした。仕事のパフォーマンスにも影響はなく、フルリモート体制だった4カ月間の業績は落ちるどころか、むしろ上がったくらいです。

そもそも経営者である私自身、以前からリモートワークを最大限に使ってきました。24時間を1分1秒単位で有効活用するには、本当に必要なときだけ出社するスタイルが合理的だからです。おそらく日本の上場企業経営者で一番多くリモートワークを使っているので、私は社内でも「画面の中の人」だと思われています(笑)。

なぜGMOはリモートワークでも成果を出せるかといえば、過去25年間で蓄えてきた「コミュニケーションの貯金」と「組織の習慣」があるからです。

弊社では、会社のヴィジョンや経営マインド、組織運営のノウハウや心構えなどをまとめた「GMOイズム」と題した冊子を作り、パートナー全員と日頃から共有しています。ですから経営陣やマネジメントがいちいち事細かに指示しなくても、個人が別々の場所で働きながら1つの組織としてまとまって動くことが可能です。

加えて、組織の仕事を円滑に回すための習慣も定着しています。例えば私たちは、期限管理の習慣を徹底しています。仕事の締め切りを伝える際、多くの会社では「今週中」や「今月中」といった言い方をするでしょう。しかしGMOでは、「金曜日の17時30分まで」などと「何時何分」の単位まで明確に設定します。

「今週中」と言われると、人によっては「金曜日の深夜0時まで」と解釈するかもしれません。すると夕方までのつもりで依頼した上司は、イライラしながら何時間も待つことになる。リモートでは部下の顔が見えないので、なおさら精神的なストレスは増すはずです。もちろん仕事の進行も、その分だけ遅くなる。期限管理の習慣が根付いている組織とそうでない組織では、マネジメントの質や仕事のスピードで大きな差がつきます。