香港政府にとって新型コロナ対策など二の次でしかない

朝日社説は「香港政府がコロナ対策に知恵を絞り、選挙を予定通り実施しようと力を尽くした形跡はうかがえない」と指摘し、「それどころか選挙の公正さはすでに損なわれていた。民主派の候補者12人が、国安法に反対したなどの理由で立候補資格を取り消されていたからだ」とも書く。

傀儡でしかない香港政府にとって新型コロナウイルス感染症の対策など二の次でしかないのである。朝日社説も「こうした経緯を踏まえれば、体制に批判的な言動は一切許さないとする民主派つぶしの狙いは明らかだろう」と分析している。

朝日社説は主張する。

「日本を含む国際社会は、香港の自由剥奪の動きを座視せず、外交的な手を尽くして中国にブレーキをかけさせるべきだ」
「香港から逃れる人々の受け入れなど、香港の人権を守るための国際的な対応策を決め、早急に行動する必要がある」

「自由剥奪」「中国にブレーキ」「香港の人権」と朝日社説は得意の語句を並べるが、今回は不思議と鼻につかない。それだけ香港や中国の動きが異常だからだろう。

「香港議会選延期 民主主義の形骸化を懸念する」

読売新聞の社説も8月4日付で香港の立法会選挙の延長を取り上げている。見出しは「香港議会選延期 民主主義の形骸化を懸念する」だ。

読売社説は「香港では7月以降、感染者が増加傾向にある。だが、中国や香港政府の説明を額面通りに受け取ることはできない」と書いたうえで、こう指摘する。

「議会選では、中国が香港の頭越しに施行した国家安全維持法(国安法)の是非が最大の争点になるはずだった。反体制運動を取り締まる国安法について、民主派の議員や候補は反対する立場だ」
「民主派の立候補者を絞り込む予備選には、予想を大幅に上回る61万人が参加した。香港政府が延期を決めたのは、国安法への反対世論が噴出し、民主派が勝利することを恐れたからではないか」

今回の選挙の延期理由について、朝日社説も読売社説も同じ見方をしている。沙鴎一歩も同じ見解である。香港政府と中国は香港市民の批判の声を恐れている。もっと言えば、それは中国の国際世論に対する恐れにつながる。

「わずか1カ月で言論の自由が急速に失われている現状」

続けて読売社説は書く。

「香港での摘発を逃れるため、英国などに滞在する民主活動家ら6人は、『外国などの勢力と結託して国家の安全に危害を加えた』として指名手配された」
「ネット上に『香港独立』の書き込みをした活動家4人は、国の分裂を煽ったとして逮捕された。街頭での抗議活動以外で国安法が適用されたのは初めてだという」
「香港メディアは国安法を意識し、当局批判を抑制し始めた。図書館や学校からは、民主活動家の著作が撤去されている」
「国安法施行からわずか1か月で言論の自由が急速に失われている現状は看過できない」

海外にいる香港市民への弾圧、ネット上での取り締まりの強化、メディアへの圧力、著作物の破棄、言論の自由の喪失……と国安法の悪影響はあまりにも大きい。

最後に読売社説はこう訴える。

「香港政府は、民主派への弾圧を強めるほど、『コロナ対策による選挙延期』という主張が説得力をなくすことを認識すべきだ」

この主張は分かるが、少し迫力不足ではないだろうか。せめて「民主派への弾圧を許すな」と訴えてほしかった。

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