エナジーシステム事業で3兆円以上

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パナソニックの「エナジーシステム事業」

特にエナジーシステム事業に関する領域は脚光を浴びた。

家電製品や機器の省エネ性能をさらに高め(省エネ)、太陽電池や燃料電池などで電気を創り(創エネ)、リチウムイオン電池などに代表される蓄電池に電気を蓄える(蓄エネ)。この“3エネ”はパナソニックグループが好んで使うキーワードだ。これらを総合的に制御するエネルギーマネジメント、各技術をシステム化してCO2排出量削減やコスト削減などを提案するエナジーソリューションといった新たなビジネスを展開する。同事業は、パナソニックの新しいフラッグシップ事業として位置づけられた。

それは具体的な数字にも表れている。09年度のエナジーシステム事業の売上高は5400億円だが、12年度に8500億円、100周年を迎える18年度には、なんと3兆円以上という売り上げ目標が設定されているのだ。

パナソニックに代表される電機業界において、韓国のサムスン、LG、中国企業など、アジアの他のグローバル企業間の競争は熾烈を極めている。「パナソニックはGT12を前倒しで実行するくらいの勢いが必要」。株式市場関係者などからそんな声があがっていた。

実際に、パナソニックの株価は、4月の高値からじりじりと値を下げ、GT12の発表後も下げ止まらなかった。こうした市場の声が、三洋と電工の完全子会社化を決めた一因にもなったのだ。

その記者会見で大坪社長はこう語った。

「世界の同業他社は、100メートル競走のような(速い)スピードで事業拡大、成長にチャレンジしているのに、われわれは、中距離競走のようなスピードで戦おうとしている。GT12を確実に達成するためにも、思い切ったスピードアップの施策を取る必要がある」

パナソニックは、両社を完全子会社化し、グローバル競争を勝ち抜くためにアクセルを一気に踏み込んだのである。

パナソニックといえば、一般的にはテレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電メーカーのイメージだ。しかし、グループ全体で見れば業務用の空調設備や冷蔵・冷凍ショーケース、リチウムイオン電池、太陽電池、住宅建材、電気設備、電子材料、さらにはパナホームの一戸建てまでと非常に幅広い分野を手がける電機メーカーとなる。

多種多様なパナソニック製品を街、ビル、家に“まるごと”提供することができるのは、世界中を眺めてみてもパナソニックくらいだろう。グループで「まるごと事業」が展開できる……この強みを、新たな収益の柱に引き上げることになったのである。

(的野弘路、永野一晃=撮影)