ランナー向け会見に松岡修造登場、国内メーカーの「致命的な弱点」

新モデルの投入で、ミズノの反撃が始まるのか。

水野社長は、「コロナの影響で自粛生活をされて、(集団で)スポーツするのは難しい。でも、外を走ることはできる。ランニングシューズは市場性も高い。グローバルの市場でも大いなる成長余地があると考えております」と話すと、目標とする販売数については、「(全世界で)100万足以上は売りたい」と息巻いた。

発表会後半では、ミズノブランドアンバサダーを務めるスポーツキャスターの松岡修造、昨年のラグビーW杯で活躍した田中史朗(キヤノン)、リオ五輪男子4×100mリレー銀メダリストの飯塚翔太(ミズノ)が登場して、新モデルに関するトークセッションが実施された。

写真提供=ミズノ
松岡修造氏
写真提供=ミズノ
田中史朗氏

いつも通りに熱かった松岡修造は、「これを履いたら、他のシューズは履けない」と猛アピールしていた。松岡の存在で会見はひときわ華やかなものになったが、筆者は、このメンバーしか集めることができなかったところにミズノの弱点が表れている、とも感じた。

なぜなら、ランニングシューズの発表会にもかかわらず、マラソンで日本トップクラスの選手をセッティングできなかったからだ。

ミズノのサイトには、前出の嶋津を含む創価大と日大の4選手が登場し、新モデルを履いた感想などが語られている。しかし、この学生メンバーでナイキと真っ向勝負するのは厳しい。

東京五輪マラソン日本代表内定者6人中5人のナイキに対抗できるか

東京五輪の男女マラソン日本代表内定者6人のなかで、内定を決めたレースでミズノを履いていた選手はいなかった。前田穂南がアシックスで、他の5人はナイキだ。

昨年9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)はナイキ厚底シューズの使用が男子30人中16人だったが、今年3月の東京マラソンでは男子完走者107人中94人(87.8%)がナイキを着用。厚底シューズの圧倒的なパワーに気づいた選手たちが続々と他メーカーからナイキに履き替えている。

しかも、ナイキは大迫傑、中村匠吾、服部勇馬、設楽悠太ら国内トップ選手と契約を結び、他社が簡単には手出しできないような状況を作っている。ミズノに今冬のレースで「WAVE DUEL NEO」を着用予定の日本トップクラスの選手がいるのか質問したが、現状公表できるのは村澤明伸くらいだという。東京五輪が来年に延期されたとはいえ、日本人選手がミズノのシューズを履いて札幌を駆け抜けることは非常に難しい。

アシックスも6月12日にニューモデルを投下している。ナイキ厚底シューズと同じようにカーボンプレートを搭載したレーシングシューズの「METARACER TOKYO(メタレーサー トウキョウ)」だ。正月のニューイヤー駅伝と箱根駅伝では、そのプロトタイプを履いた選手が好走しており、前評判は高かった。

ソールは爪先にかけて反り上がっており、その形状変化を抑えるためにミッドソールにカーボンプレートが内蔵されている。ソールの構造上、自然と脚がまわるので、地面を楽に蹴ることができるという。重量は190g(27.0cm)で、価格は税込2万2000円だ。