北朝鮮にとって文政権は信頼できない相手

「確実に南朝鮮(韓国)と決別する時が来た」

北朝鮮の朝鮮中央通信が金与正朝鮮労働党第1副部長の「断絶談話」を発表した6月13日以降、文大統領の動揺ぶりはまるで恋人にフラれたかのように痛すぎるものだった。韓国・平昌五輪の開会式で握手を交わして笑顔を見せ、ソウルで北朝鮮芸術団の公演を楽しそうに与正氏と観覧したのはわずか2年半前のこと。互いに国の代表とはいえ、その立場も年齢の差も感じさせないほどのムードに包まれたはずだった。

文大統領は「過去の対決時代に戻そうとしてはいけない」「平和と統一の道を一歩ずつ進まなければならない」と再接近を求めているが、与正氏は「嫌悪感を禁じ得ない」と一蹴。特使派遣も拒絶されるなど、大統領就任後3年あまり費やしてきた融和の道はアッという間に閉ざされてしまった。

諦めきれない様子の文大統領は統一相や国家安保室長、国家情報院長などのポストを刷新して北朝鮮との関係をより重視する姿勢を見せ、7月7日から韓国に「ドラえもん」役である米国のスティーブン・ビーガン国務副長官を招くカードを切ったが、それも北朝鮮側から「未熟」と断じられる始末。北朝鮮からすれば、ジョン・ボルトン前米大統領補佐官が著書で暴露したように対北軍事オプションを米国と協議している文大統領は信頼できる相手とはいえないということだろう。

同盟国・アメリカの評価も辛辣

過激漫画もびっくりの罵詈雑言を韓国に浴びせる与正氏の語彙力にも注目が集まっているが、同盟国である米国も韓国への評価は辛辣だ。それを端的に示している例としては、ボルトン氏による文大統領批判に加え、バラク・オバマ政権で国防長官を務めたロバート・ゲーツ氏の証言があげられる。ゲーツ氏は著書「イラク・アフガン戦争の真実」で、文大統領が流れを汲む廬武鉉元大統領について「少し頭がおかしいと思った。彼には、アジアにおける安全保障の最大の脅威は米国と日本だと言われた」と明かしている。2019年4月の訪米時、トランプ大統領は文大統領との首脳会談をたったの「2分間」で終わらせたのは記憶に新しい。

文大統領はその一方で、アジアの「ジャイアン」役である中国にはペコペコし、米国への牽制にも一役買ってしまう始末だ。新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、さすがに中国人の入国禁止措置を「実効的ではない」と回避した際には「中国の大統領のようだ」などと批判され、大統領弾劾を求める請願に賛同が集まったが、もはやどこを向いて職務を果たしているのか分からなくなる。