認知症になりやすい性格

認知症になりやすい性格があることはこれまでにもいろいろ研究されている。たとえば精神科医のノエとコルブは「老年痴呆になるような人は元来、融通の利かない、かたくなな人が多い」と指摘している。

日本では東京都老人総合研究所の柄澤昭秀副所長(当時)らが認知症になりやすい性格の研究を行っている。その結果、認知症の高齢者は、中年期に「無口でがんこ、非社交的」な人が多く、健康老人は「中年期から明るく開放的で積極的」な人が多かったといった特徴があることがわかった。

調査は、認知症の老人165名とほぼ同年齢の健康老人376名を対象に、近親者に40~50歳のころの性格はどうだったかを質問。その結果、認知症患者に多く見られた性格の特徴としては、「がんこ」「社交的でない」「わがまま」「整とん好き」「臆病」「短気」「無口」だった。一方健康老人に多く見られた特徴は、「明るい」「正義感が強い」「社交的」「行動的」「確認癖」などだ。

人々の行動パターンは性格によって異なる。それが精神面、身体面、そして社会面での違いを生む。その違いが、認知症の発生リスクに大きな影響をおよぼしていると考えられている。

精神・身体・社会活動の各相で活発に暮らすことが、なぜ認知症の予防に役立つのか。これらの活動が、脳をよく刺激して「予備能」を増やし、認知症を予防してくれるらしい。「予備能」は脳に病変が生じても、それに対抗して認知機能を保持する能力のこと。ウォーキングや運動でも社会活動でも、趣味でも読書でも人との交友でも、なんでもいいので活発に行動することが脳を刺激して、予備能を増やしてくれる。

最近の研究でわかってきたのは、地域活動とか社会活動に参加する頻度が少ない人ほど認知症になる確率が高いということ。わがままだったり、がんこだったり、自分の殻にこもるような人はそういった活動に参加する頻度が少ない傾向にあるので、要注意。生活様式や行動様式を変えることは、認知症のリスクを下げることに効果的だ。

コロナ危機の中で楽観的に生きる法

さて、これまでの調査・研究を見ると、楽観的で明るい性格のほうが寿命も長く、認知症にもなりにくいという結果だと言えるが、それは、人の気分が免疫力に大きく影響しているからだ。人は、悲観的になると免疫力が下がってくる。免疫細胞の1つであるナチュラル・キラー(NK)細胞の活性が人の気分によって変わることによるもので、楽観的な気持ちになったり、リラックスしているとNK細胞の機能は増してくる。

逆に心身ともに疲労していたり、ウツ状態だとNK細胞の活性は弱まる。免疫力の低下は、いろいろな病気に関わってくる。今は新型コロナ禍で心身ともに疲弊しているときだけに、ポジティブで前向きに物事を考えることで、NK細胞の活性を高める必要がある。

もう1つ心がけたいのが笑うこと。笑うとNK細胞の活性が上がるので、免疫力が強くなる。作り笑いでも上がるらしい。笑いは楽して免疫機能を高める方法だ。

特に新型コロナの影響で、デイサービスなどへ通えなくなった高齢者が家に閉じこもることが増えている。そのため体力の衰えや刺激の減少で認知症になったり、要介護に進むケースも多くなるだろう。両親が要介護や、認知症適齢期の読者も多いと思うが、離れて暮らしているのであれば電話でもして、まずは話しかけてあげること。笑いを誘って楽観的な気持ちにさせてあげることが大切だ。

(構成=吉田茂人)
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